一昨日の金曜日で、大学カリキュラムのインターンシップの今年の受け入れがすべて終わりました。最後はインターン生を交えて、有楽町のガード下で呑んでました。インターンは私たちにとって夏の風物詩です。今年は5大学7名の学生を受け入れました。2人、2人、3人と、3つのスケジュールで受け入れ、うち2人は大阪です。徹底的に取り組んだ5名と、それを受け止めた多くの社員それぞれにお疲れさまと言いたいです。
「人材教育」6月号で、インターンシップについての特集があり、取材を受けました。5つの質問に対してその場で感じた考えを書いて戻したのですが、スペースの都合でだいぶ整理されて掲載されたので、自分のためにここにもとの文を残しておきたいと思います。私のインターンシップに対する思いの整理にもなっています。いきなりスタートからひねくれた回答になっており、すみません。
■インターンシップについての5つの質問
Q1 採用志向、教育志向、どのような場合に適していますか?どちらも目的がまったく違うので、どちらに適しているということは一概にいえないと思います。いうまでもなく、設計がきちんとしていれば、インターンシップという手法はどちらにも適していますし、まともな設計ができないままで運用すれば、目指した効果はどちらでも期待できません。そもそも、こういった二択的な議論がされている風潮自体が危険であり、インターンシップの議論を本質的なものから遠ざけています。
企業、大学、大学生のそれぞれがインターンシップにどんな思いを込めているのかが大切であり、その目的にあった設計になっているのかがポイントかと思います。採用志向のインターンシップがやりたければ、それにあったプログラムとコンテンツの設計を行い、それを志向した学生を集めればいいわけですし、教育志向のインターンシップについても同様かと思います。
Q2 採用に直結しないインターンシップにコストをかける意味はありますか? 誰にとっての「意味」かというのが大切ですが、企業にとっても意味があると思いますし、大学、大学生にとってはとても意味があると思います。
できれば、大学生活の早い時期に1カ月間でもいいから、インターンシップとしてどこかで実際に就労体験をしてみるだけで、相当に就業観、職業観はかわってくると思いますし、その後の大学生活の送り方も目に見えて変わってくると思います。その意味では、大学と大学生にとっては、とても意味があると思います。
企業にとっても意味はあります。特に中堅企業で、毎年毎年、新卒新人が入ってはこないような組織においては、育てるという思いや仕組みの組織内での連鎖がなかなかできません。それをインターンシップ生を活用して創り出すことができます。
新人が組織に入ることによるメリットは大きいものがあります。自然と組織は活性化しますし、先輩も襟を正して仕事をします。暗黙知を形式知化しようという動きも起こりますし、何よりも新人を教えるという行為自体が、先輩社員に深いリフレクションと気付きを呼び起こします。コンスタントに新卒新人を入れられない組織では、インターン生を招き入れることにより、これらの疑似体験をリアルにできることになります。
Q3 長期型、1day、それぞれのメリット、デメリットは?これらはメリット、デメリット比較をすべきものではなく、まったく異なる性質で狙いがまったく違うものです。このようにまったく違うものが、同じ名前で呼ばれているところに最大の混乱があります。
採用候補者を広くネットワーク化したいのであれば、長期型なんていっている場合ではなく、限りなく1dayに近づくはずです。要は、合目的的に考えて作ればいいだけです。
Q4 学生の興味を惹く面白いプログラムを工夫する?現実の業務をリアルに見せる?どちらに力点を置くべきでしょうか?いうまでもなく、これもインターンシップの目的によって異なります。例えば、BtoB企業の採用目的であれば、知名度がけして高くはない自社及び自社の属する業界に対して、より多くの学生に興味をもってもらうことが目的の1つになるでしょうから、学生の興味を惹く面白いプログラムを工夫しなければ、それは設計担当者の怠慢になります。
逆に学生に本当の就業経験をさせたいのであれば、現実の業務をリアルにみせる以外に方法はありません。ただし、インターンシップという限られた期間で「リアルにみせる」のは行き当たりばったりでは無理で、意図的にインターンシップ期間中に経験学習のサイクルがきちんとまわるような設計が必要です。これがきちんとできれば、2週間程度でもそこそこの学びと気づきは起こせると思います。ただし、あくまでもそれらは日常から切り離したところで行うのではなく、日常の中で、もしくは日常と密接にふれるところで行うことが大切です。
「現実の業務をリアルに見せる」という意味では、アルバイトとインターンシップの違いをきちんと考えるべきです。これをきちんと考えていけば、実は逆にアルパイトをインターンシップ化させることもできるのです。この違いを一言でいえば「日々の仕事の中に学びが意図的に仕組化されているかどうか」だと思いますが、これは工夫次第でアルバイトという立場でも十分に提供することができます。
アルバイトはほとんどの学生が日常的に行っています。何もとってつけたように長期のインターンシップに行かなくても、アルバイトの中からインターンシップと同様の学びが得られれば、これは一石二鳥です。長期の学生アルバイトを活用している企業であれば、今後はこの部分に着目をしない手はありません。もちろん、既に意識をし始めている人たちも出てきています。
アルバイト採用難の時代がきていますし、学生人口の減少に伴い、学生アルバイトを集める難易度は将来はさらに高まるでしょう。自社のアルバイトが、学びと成長のあるアルバイトであるとブランディングされることによって、優秀なアルバイト人材を集めることができるという仕組みをつくらないと、時給・勤務条件等の外形的な判断基準ばかりでのむなしい採用競争に陥ることになります。
Q5 現場の負担が大きいOJT型インターンシップ。どのような受け入れ態勢をつくればいいでしょうか?単純な話ですが、方法は2つしかありません。1つは、現場に負担感以上のメリットを認識していただくこと。もう1つは、多少の負担はあっても「やりたい」という人を現場につくること。
前者は、容易ではありません。だまされたと思ってやってみることにより、結果的にメリットを感じるという攻め方しかないかもしれません。理詰めで攻められる世界ではないように思います。
そして、残念ながら後者も容易ではありません。後者の場合は、その気になりそうな人を社内から発掘して、成果をあせらずに個別に口説いていくことでしょう。また、その努力と並行して、まずはおひざ元の人事部でOJT型インターンシップを多数実施して、自社におけるOJT型インターンシップの仕組みとパターンを確立させ、ツールなどを用意することです。そういった地道な努力により、少しずつ浸透をさせていくことが大切なのかと思います。
人は誰かを育てたいという欲求を持っているはずだと信じ、人は誰かを育てることによってまた成長するのだと信じ、思いをもって愚直に続けていくという正攻法しかないのかと思います。
※リリーさんの作品たち。何となく、インターンシップから連想されました…。