組織社会化論は、私たち企業で人材教育に関係する者として、非常に大切な観点です。
東京大学の中原淳先生の最新著作「職場学習論」では、組織社会化論の定義を2つ紹介しています。 「個人が組織の役割を想定するのに必要な社会的知識や技術を習得し組織の成員となっていくプロセス」 「新参者が、参入する組織の新たな役割や規範や価値を習得し、変化し、適応していく過程」 企業において、組織社会化をもっとも理解しやすい存在は、新卒新入社員でしょう。 新卒新入社員における組織社会化とは、二面性があるように思います。すなわち、社会全般に対する組織社会化と、当該組織に対する組織社会化です。前者はビジネス社会一般に対する適応であり、後者は入社した固有企業に対する適用です。強いていえば、前者は「社会社会化」、後者は「会社社会化」とでもなるでしょうか。 そのいずれもが、入社した企業において行われるところがポイントです。 「組織社会化とは、組織という制約の中で、組織にとって益のある現実的行動を発達させる、組織参入時のプロセス」との記述が「職場学習論」の中にもありますが、ポイントは「組織にとって益のある現実的行動」ですね。ですから、「組織にとって益のないもの」はこの時点でスポイルされるわけです。尖っていた新入社員が入社した後に急速に角が取れていく、なんていう現象は、企業にとって組織社会化が成功したということなのかもしれません。それを称して「成長したな」という先輩もいるわけですから、組織の同一化機能はきわめて強いものがあります。 近年は新卒内定者研修を強化する傾向があり、これは組織社会化の早期化・強化現象だといえます。 企業が新卒新入社員の組織社会化を急ぐ理由は何でしょうか。 企業の面からみれば、組織社会化できた新卒新入社員は「適応」できた新卒新入社員です。上手に組織社会化ができない新卒新入社員は「不適応」者です。そして、不適応者の多くが、早期退職の道を選択したり、メンタルヘルス的問題に陥ったりすることを現実経験から知っています。企業にとってこれらは是非とも避けたいことです。組織社会化を急ぐことにより、新入社員が「小さくまとまってしまう」リスクを持つとしても、組織社会化されないことによるリスクよりもベターであるとの意識があるわけです。 新卒新入社員の組織社会化を考える際に、どうにも私にはわからないことがあります。 企業は明らかに組織社会化の促進を強化しています。採用段階・内定段階での取り組み、内定者教育の強化、入社時研修の再強化、メンター制度の導入、OJT制度の見直し、いずれも組織社会化の促進施策だともいえます。 よくわからないのはその背景です。 従来よりも新卒新入社員の組織社会化が容易ではなくなったという現実があるのかどうかという点です。危険なほどに組織社会化(この場合は会社社会化)しやすい新卒新入社員が増えているのではないかという疑念と、企業生活ができるだけの組織社会化(この場合は社会社会化)をするには相当に鍛えないと駄目だなとう新卒新入社員が増えているのではないかという疑念と、そのはざまで組織社会化の必要性は高まっているのか。 逆の観点からみると、強固に組織社会化されないと、耐えがたい組織が増えているのかもしれないという疑念もあります。ソーシャルサポートの力が低下した組織では、深く組織社会化しないと組織に溶け込むことができないのかもしれません。 果たして新卒新入社員育成担当者は、このあたりをどうとらえて業務設計をしているのでしょうか。
《2010年11月13日》 今日はこれから大学の同期会、行ってきまーす。 ![]() ![]() ![]() ↑ブログランキングというのに参加してます。よろしければクリックして一票投票を
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