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「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」~トヨタ生産方式①
大震災によりサプライチェーンが途切れて、日本の(というか世界の)自動車業界は大変なことになっていますが、その根本であるトヨタ生産方式に対しては、特に大きな批判の声であるとか、見直しの声が聞こえてくるわけでもないように感じられます。そんな中で、トヨタ生産方式の生みの親ともいえる大野耐一副社長が昭和53年に書きあげた著書「トヨタ生産方式~脱規模の経営をめざして」を読んでみました。実に30年以上前のビジネス書、ということになります。ここ最近のビジネス書が下手をすると半年もすると陳腐化しがちなのに比較して、さまざまな学びがあります。ということで、学べたエッセンスについて数日に分けて整理しておきたいと思います。

トヨタ生産方式が着目され始めたのは、おそらくオイルショック以降なのではないかと思いますが、実はこの思想の源はは戦後間もなくからトヨタ内で育まれてきたものです。

トヨタ生産方式の基本思想は、徹底した「ムダの排除」であり、それによる「原価の低減」です。この前提には、当初から原価積み上げ方式での単価設定ではなく、価値と価格は市場が決めるものという思想があったわけですから、これはもの凄いことです。

トヨタ生産方式を貫く2つの柱は、「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」です。

「ジャスト・イン・タイム」は、1台の自動車を流れ作業で作り上げていく工程で、組み立てに必要な部品が、必要なときにその都度、必要なだけ、生産ラインの脇に到着するということで、これによって物理的にも財務的にも経営を圧迫する「在庫」を限りなくゼロに近づけることができます。

これの実現のために、生産の流れに逆転の発想を取り入れます。それ以前は「前工程が後工程に必要なものを供給する」という当たり前の発想だったものを、「後工程が前工程に、必要なものを、必要なとき、必要なだけ引き取りに行く」、そして「前工程は引き取られた分だけ作ればよい」とひっくりかえすわけです。そして、各工程をつなぐツールとして「かんばん」を用意して、何をどれだけ欲しいのかを明示し、生産量、必要量をコントロールするわけです。「かんばん方式」といわれますが「かんばん」はあくまでもツールとして登場するのです。

もう1つの柱である「自働化」は、にんべんのついた「自働化」とも語られていますが、「自動停止装置付の機械」を意味するとのことです。これは、いまやあらゆる産業界で導入されていますが、トヨタ式以前では新鋭機械の導入により生産能力としては高性能化、高速化しながらも、何かの異常があっても機械は止まらずに不良品の山を築くのが当たり前だったようです。
ただし、自動機ににんべんをつけるということは、単に不良品削減だけが成果にとどまりません。人は機械が正常に動いている時には必要がなく、異常が発生して機械がストップしたときに初めてそこにいけばいいわけです。これは多くの工場で今日、見られる光景です。ですから、人は1つ機械に張り付く必要はなくなり、1人で何台もの機械が受け持てるようになり、工数低減が進み、生産効率が飛躍的に向上するベースができます。

また、違う観点からみてみると、異常が発生して人が張り付くようなことが頻発するライン、機械にはそもそもの問題が何かあるということになります。異常があれば機械を止めるということは、問題の所在を明らかにするということです。問題があっても担当者の範疇で管理監督者に知られることなく繕ってしまっては、問題の本質的な解決にはなりません。問題がはっきりすれば、改善も必ずできるわけです。究極の「見える化」です。

トヨタの凄いところは、この思想を発展させて、人手作業によるラインであっても異常があれば作業者自身がストップボタンを押してラインを止めるというところまで徹底したところです。正常・異常の別が常に明確になり、きちんと再発防止の手が打たれることを仕組化したわけです。
この思想は管理間接部門にも適用することができます。「見える化」には極めて単純かつ有効な手法だといえます。

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざしてトヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
(1978/05)
大野 耐一

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《2011年5月5日》 子供の日。岡本太郎展に行きました。


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【2011/05/05 23:08】 | マネジメント・リーダーシップ | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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