「3年でアメリカに追いつけ」~トヨタ生産方式②
続きです。

戦後まもなく、国産自動車の生みの親ともいえる豊田喜一郎氏は「3年でアメリカに追いつけ」と社員を叱咤激励したとのことです。当時、日本とアメリカの生産性の差は「9倍」あるといわれていたということですから、これは大変な目標です。そして、大変ではありますが、明確な目標です。高度経済成長期までの日本は「追いつけ」が国家的な目標でもあり、それがゆえにストレッチはしているものの「明確な」目標があったのだといえます。何でもそうですが、目標が明確であればあるほど、人は心に火をつけやすいものです。これが今の時代の難しいところです。

アメリカの場合、職能別労働組合の仕組みが定着していたこともあるかもしれませんが、工員はすべてが単能工でした。旋盤を担当する工員は旋盤しかせず、溶接をやる工員は溶接しかやりません。ですから、工場レイアウトなども旋盤が50台も100台もまとまって配置されているなどというのが普通だったそうです。

これに対して、トヨタでは既に昭和22年の時点で、1人の工員に多数かつ多工程の機械を担当してもらうことに取り組み始めました。これを「工場に流れをつくる」と称しています。

当時のアメリカ方式では、工場内の機械の数も多いですし、人間の数も多くなります。そんな中でコストダウンを図るとすれば、選択しうる唯一の方法は「量産によるコストダウン」になります。量を多く作ることにより、自動車1台あたりの人件費を安くする、償却負担を軽くするということになります。そして、そのために高性能・高速度の機械を導入する必要が出てきます。

そして、多くの日本企業がこのアメリカ式大量生産方式を夢の方式と錯覚して取り入れます。この方式は、高度経済成長期には日本においても機能しました。マスの誘導による少品種大量生産が前提にあったからです。前年比数10%という驚異的な経済成長率が前提にあったからです。そして、このアメリカ式の量産システムこそが日本の風土にも合うシステムだとの錯覚する起こしました。

それに気づかされたのが昭和48年秋のオイル・ショックです。

前年比数%、もしくは横ばい、下手をするとマイナス成長ということが現実的になり、市場ニーズも分散して行く中で、求められるのは少品種大量生産ではなく、多品種少量生産になります。また、ダイナミックな計画に基づく生産ではなく、こまめな見直しに基づく生産です。戦後まもなくから取り組んできたトヨタ生産システムが脚光を浴びるには、このような環境変化がありました。しかし、大切なところはオイルショックによる環境変化によりトヨタがこの方法に取り組んだのではなく、「日本に自動車産業を興す」というその時から、当時は一世を風靡していたアメリカ型のコピーではない姿を明確に描いてきたことです。

トヨタは生産の平準化を目指しましたが、これを常識をひっくり返ることによって実現させました。効率化、コストダウンを果たすためには、できる限りロットはまとめて大きくし、同じ作業を続け、段取り替え作業(ロットとロットの切り替え作業)を少なくするのが常識でした。これは確かにそうです。しかし、あえてトヨタは、「ロットは小さく」「段取り替え作業をすみやかに」することによりこれを実現させたのです。例えば、カリーナのコロナ(本書で例示に出ていますが、いずれも懐かしい名前です)を作る場合、午前中はカリーナ、午後はコロナと作るのではなく、カリーナとコロナを1台交代で作るといったことを志します。クレージーな発想ともいえますが、これによって段取り替えをいかに素早くやるかというニーズが発生し、その解決のためにさまざまな知恵が投入されます。昭和20年代には2~3時間を要していたプレスの段取り替えは、40年代半ば過ぎには3分にまで短縮されたとのことです。これは画期的な機械ができたのではなく、1つ1つの小さな努力の集積の結果なのです。

これらのイノベーションの前提には「3年でアメリカに追いつけ」という明確かつチャレンジングな目標を提示した経営側と、そのためにはアメリカの真似だけでは難しいのではないか、どうせやるならばもっと良いやり方があるはずとの思いをもった現場側のハーモニーがあったからこそではないかと、強く感じさせられます。

トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざしてトヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして
(1978/05)
大野 耐一

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《2011年5月6日》 連休の中日。こういう日に仕事をするのが何となく好きです。特例子会社に久々に朝一番からいったら、全員がそろって出社していました。やっぱりここには労働の原点があります。まだ、有給休暇がないという理由もありますが、働くことが目的になっているのは素敵なことです。



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