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人が死なない防災~釜石の奇跡①
数日前に少しだけ書きましたが、先週末にお話しを伺った「釜石の奇跡」について記録に残したいと思います。

先週の金曜日の夜、群馬大学の片田先生を囲んだワークショップがあり、冒頭で片田先生から「想定外を生き抜く力~命を守る主体的姿勢を与えた釜石市津波防災教育に学ぶ」という講演をまずはいただきました。そのあと、4つのグループに分かれてワールドカフェ風にダイアローグ、そして最後は全員で車座になって語り合います。

今年3月11日の東日本大震災では、15783名もの方が亡くなり、9月12日現在で4083名の方が未だに行方不明となっています。1896年の明治三陸津波の犠牲者は22000名だったそうです。その後、防潮堤が増強され、さまざまな訓練も行われてきましたが、今回の大津波でも多くの方の命が失われる結果となりました。

そんな中で「釜石の奇跡」と言われている話があります。

釜石市の小学生1927人、中学生999人のうち、津波襲来時に学校の管理下にあった児童・生徒については、全員の無事が確認されているのです。ただし、学校管理下になかった5名が津波の犠牲になりました。釜石市でも津波はハザードマップの想定を大きく超えて街を襲い、甚大な被害が出ているのですから、これは確かに奇跡的な数字です。そして、その軌跡を生んだのが、片田先生が長らく取り組んできた津波防災教育なのです。

片田先生が語る防災の本質は明確です。

「人が死なない防災」、これにつきます。ただ、現実には世の中は「生き残った人のための防災」に目が向きがちなところもあります。帰宅難民対策などはこれでしょうが、何よりもまず「生き残る」ことなくして、次はありません。片田先生にこの思いを強くさせたのは、2004年12月26日のスマトラ島沖地震によって発生したインド洋津波の現地を歩いた体験だそうです。先に書いたとおり三陸地方では1986年の明治三陸津波でも22000名の犠牲者を出しています。喉元過ぎればなんとやらではありませんが、同じ間違いを繰り返すことは避けたい、そんな思いを強くされたことと思います。

防災はある意味では土木の世界でした。もっと堤防を高くするということが防災対策の基軸でもありました。過去のあらゆる津波でも超えられない防潮堤、「日本一の堤防」、「万里の長城」とももいわれる10m級の防潮堤があれば当然、住民はそれに信頼を寄せますし、安心もします。そして、防潮堤があるから大丈夫だと思い、逃げ遅れた人も少なくなかったことでしょう。今回の津波はそれをはるかに超えました。また、防潮堤がそびえたっていたがために、一部の人では津波の来襲に気づくのが遅れたという側面もあるようです。

防御のレベルを上げれば上げるほど、防災への依存度が高まります。
人為的に守るほど、人間の脆弱性も高まるのです。

片田先生は海のない県にある群馬大学に在籍されています。そして、6年ほど前から釜石で津波防災教育に取り組まれてきました。最初のうちは、大人を対象にした普通の防災講演会を実施していました。何度も実施するのですが、参加者の顔ぶれはいつも同じであり、もとから津波防災に強い興味・関心を持っている住民ばかりが集まっていたのです。本当に伝えなければいけない人たちにはアクセスできない、このジレンマは小さくありません。そして、片田先生がたどりついた結論は、子供を中心とした津波防災教育です。

子供は10年もたつと大人になります。そして、さらに10年もたてば親になります。子供に津波防災教育を行うことによって、世代間で知恵が継承され、災害文化として定着することを狙ったわけです。実に息の長い仕掛けですが、津波防災にはこういった息の長さがまた大切なのです。

こうして学校教育・子供を中心とした津波防災教育が始まったのですが、この効果は世代効果だけではありません。親というものは、日々の忙しさに忙殺されて災害のことまでは気が回らないものです。ですから、講演会にはよっぽどのことがなければ足を運びません。でも、子供のことは常に心配です。最優先に考えます。そこで、子供を介して親の関心を引き出すことも考えられました。

長くなりましたので、津波防災教育の中身については、また明日。


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【2011/09/23 23:21】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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