就職活動における「期待値調整」
海老原さんの「間違いだらけの新卒一括採用批判を斬る」の続きです。海老原さんの主張で私たちが最も考えるべきは「期待値調整」という概念です。

現在の新卒採用スケジュールは、各社横並び・集中的なものになっています。4月には金融を皮切りに大手・人気企業が内定を出し始めます。そして、5月末には大手・人気企業はほぼ内定を出し尽くします。こういった集中的な流れに対して、反新卒一括採用を主張する人は「通年採用」を持ちだします。大手・人気企業は1年中採用活動をするべきだということになります。

ある就職担当の先生から聞いた話です。

とある学生が持ってきた就職希望先は世の中でもトップクラスの超人気企業。それ以外の希望先も有名企業が並びます。ただ、学生も何も考えていないわけではなく、自分の大学の就職実績を調べて先輩が就職しているからという論拠を持っていました。でも、ちょっと待ってください。全学で数千人学生がいるその大学の中で、その超人気企業に入ったのは2人。もしかしたら、強い縁故があった学生かもしれません。普通であれば、数千分の2に自分がなれるとはなかなか思わないものですが、なぜか就職活動ではそのあたりがリアルに感じられず、自分も超人気・大手企業に入れるかもしれないと思う学生が大勢いるのです。しかし、日経1000社にまで拡大しても、それらに就職できる大学生は就職希望の大学生のうちの約20%だといいます。

このあたり、相場観というのが就職活動初期ではなかなかできにくいところがあるとこがよくわかります。

大学入試では偏差値という極めてわかりやすい相場がありましたが、就職活動ではそうはいきません。もちろんそれが就職活動の良いところであり、時には夢がかなうことだってあるのですが、相場観が作れないために、ずるずると現実的なターゲットを絞れずに結果的に内定取得を逃していく学生も多くいるはずです。20歳にもなればプロ野球選手にはなれないとか、歌手のデビューは難しいかなということは、誰でもわかります。それも職業相場観です。でも、これが企業選びという就職活動になるとなかなか難しいわけです。

そして、最後に相場観が形成されるのは、落ちて落ちて落ちまくることによってなのです。落ち続けることにより、知名度が高い企業以外にも良い会社がある、規模はけして大きくなくてもキラリと光る企業がある、大々的に採用広報をしていなくても人生をかけるに値する仕事がある企業がある、そんなことに少しずつ気づいていく、視野を広くしていくのは、人気・有名企業に落ちて落ちて落ちまくることでしかないと海老原さんはいいます。これはかなり同感です。

もしも大手・人気企業が通年採用をやってしまったら、いつまでも相場観を形成することができずに、残された数少ない採用枠に対して、夢を追い続ける学生が出ることは容易に想像ができます。採用活動が集中的に行われ、大手が終わったあとに中小企業が走る、総合職が終わってから一般職が走るという流れがあるからこそ、学生の相場観構築、社会的適材適所が少し前に進むのかもしれません。これが「期待値調整」です。

この「期待値調整」を早期に人工的に起こさせようと努力している方は、大学のキャリアセンターにたくさんいらっしゃいます。中小企業やBtoB企業を就職対象として意識させようという運動です。しかし、これがなかなか功を奏さないようです。いくらいっても自分だけは大手・有名企業に入れるかもしれない…、そんな思いから抜け出せないのでしょうか。その背後には親の影響もありそうです。そして多くの学生の社会観が非常に甘く薄く「幼い」という現実があります。

繰り返しになりますがキャリアセンターには、中堅企業に学生の目を向けさせようと努力している方々が実にたくさんいます。特に中堅大学ではなおさらそうです。東大・京大・旧帝大・早稲田・慶応・一橋・東工大だけでも、4.4万人もの卒業生が毎年出ます。世の中で超大手人気企業といわれる企業の採用数を合計してもいいところ2万人くらいだそうです。超大手人気企業のうち相当の企業が、学校名を無視していない採用をしていると思われる以上、これは中堅大学の学生にとっては極めて高いチャレンジです。

もちろんどこの大学にも素晴らしい学生がいることも事実であり、今の新卒一括採用がベストなやり方ではないことも確かです。でも、新卒一括採用を批判して壊すことを目指すのであれば、そのあとの絵を描かなければなりません。ですから、その絵がおぼろげながらであってもきちんと描けるまでは、私は新卒一括採用を無条件に批判することはできません。そうでなく半端な腹決めで新卒採用の改善とやらをやるから、情報提供だけ12月からなどという不思議な協定ができあがるのです。

やや散漫になりました。改めて就職活動における「期待値調整」は重要な概念です。落ちまくる以外でこれを健全に発生させることはできないでしょうか。企業側でもこの概念は活用できます。応募者の期待値調整をどう動かそうとするか、またどの時期に何を置くか、自社のポジションをどう意味づけるか、そんなことを考えることによって魅力的な採用戦略を描くことは十分に可能です。大切なのは「期待値調整」の仕方も大きな傾向はありながらも、人それぞれだということです。そして、超大手でなければ自社が採用するのはたかが数名から数十名です。70万人ほどの新卒就職希望者のうちたったそれだけの人が、ピシッと合えばいいのです。マスで勝負することには意味がありません。中堅には中堅のやり方があります。だから採用という仕事は面白いわけです。

おそらく大手企業で採用担当している若手社員よりも、中小企業で採用活動をしている若手社員の方が、格段に成長すると思いますし、人間的に魅力的なビジネスパーソンになりやすい環境にいます。

《2011年10月12日》 一昨日の急激な腹痛の原因がわからず、明日、精密検査です。で、お昼から「検査食」です。まあ、何事も経験と思ってやらないと。



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興味発掘
就職プレではない、インターンシップやバイトを企業でする事ではないでしょうか?
バイトは飲食店や家庭教師が多く、お金は入るけど、自己研鑽としての質は高くありません。
でも日本で企業の内勤バイトは少ないです。
学生は企業も育てないといけなくありませんか?
私は研究で、ベンチャー企業を回り、ベンチャーは経営者の強い意志や、ワンマン手腕がないと失敗すると結論したため、大企業を選びましたが、ここで惚れる会社に巡りあった可能性があったと思っています。
【2011/10/15 14:05】 URL | alley #-[ 編集] | page top↑
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