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応募条件の明確化 ~岩波書店の例から~
知らないうちに岩波書店の採用が話題になっていたのですね。縁故採用だといって批判する声に、厚生労働省までHPで見解を出すにいたりました。ちょっと整理してみたくなりました。

まずは、問題とされせている同社のHPの引用からです。

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募集の種別 2013年度定期採用(経験者含む)
担当業務 出版業務全般
採用人数 若干名
入社時期 2013年4月(都合のつく方には、上記以前に入社をお願いする場合があります)
応募資格 A: 4年制大学卒業者(2013年3月卒業見込者を含む)
満30歳までの方(雇用対策法施行規則第1条の3第1項[例外事由3号イ]による)
B: 出版関連業務(編集/製作/校正/販売/宣伝/経理/総務等)経験者=学歴は問わない

※岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること
(いずれの方法もとれない場合は、小社総務部の採用担当者に電話でご相談ください。)
応募期間 2012年1月23日(月)~3月16日(金)[当日消印有効]
筆記試験 4月8日(日) 試験時間:9時~12時40分(予定) (詳細については、書類選考合格者にメールまたは郵送で通知します)
面接試験 第1次:4月14日(土)/第2次:4月18日(水)/第3次:4月21日(土)

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なるほど「岩波書店著者の紹介状あるいは岩波書店社員の紹介があること」を応募条件にしています。ただ、「いずれの方法もとれない場合は、小社総務部の採用担当者に電話でご相談ください」ともありますが、この一文は最初から入っていたのかなぁ。

で、次は厚生労働省のHPからの引用です。

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平成24年2月17日

報道関係者各位

岩波書店の募集採用に関する事実関係の把握について

 厚生労働省では、企業に対して、応募者の基本的人権を尊重し、広く応募の門戸を開き、適性・能力に基づいた公正な採用選考を行うよう周知・啓発を行っています。こうした立場から、先日(2月3日)報道された、「著者等の紹介」を応募要件とする岩波書店の採用募集方法について、厚生労働省から同社に対し事実関係の確認を行い、併せて、公正採用選考の趣旨について説明しています。

 こうした把握を通じ、
○ 今回の募集方法は、応募者の熱意や意欲を把握したいという意図によるものであること。
○ 著者等の紹介を選考の基準とはせず、筆記試験と面接試験により厳正な選考を行う考えであること。
を確認し、さらに、厚生労働省の説明等も踏まえ、
○ 著者等の紹介を得ることが難しい応募希望者についても、採用担当部門で話を聴いた上で、応募機会の確保を図っていること。
が明らかになっています。

 このように、公正採用選考の観点から、同社の募集・採用活動の考え方や実態について一定の確認を行ったところですが、今後も、同社の対応が公正採用選考の趣旨に沿ったものとなっているかについて、しっかり注視していきます。

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そして、岩波書店のHPでの説明です。

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■小社の「定期採用」報道について――    2012年2月6日

小社の2013年度定期採用をめぐって、新聞、テレビ、ネット上でさまざまな報道・論評がなされています。しかし、それらのなかには、不正確な、あるいは誤解を招く報道・論評も見受けられますので、この問題についての小社の見解を以下に表明いたします。

小社は、いわゆる「縁故採用・コネ採用」は行っておりません。「著者の紹介、社員の紹介」という条件は、あくまで応募の際の条件であり、採用の判断基準ではありません。ご応募いただいたあと、厳正な筆記試験、面接試験を行っております。
この応募条件は、採用予定人数が極めて少ないため、応募者数との大きな隔たりを少しでも少なくするためのものです。
小社に入社を希望なさる方は、岩波書店著者にご相談いただくか、お知り合いの岩波書店の社員に直接ご連絡をください。いずれの方法もとれない場合は、小社総務部の採用担当者(03-5210-4145)に電話でご相談ください。

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岩波書店って知名度は抜群ですが、社員数200名程度の中小企業なのですね。資本金もわずかに900万円とのことです(いずれも同社HPからの情報)。知名度があるために、会社規模からは分不相応なほど大量の応募者がおそらく押し寄せるのでしょう。

このテーマ、絶対この方が何か発言していると思い、検索をしたところ、やはり発言をされていました。株式会社ニッチモの代表であり、「就職、絶望期―「若者はかわいそう」論の失敗」などの著者の海老原嗣生です。「BLOGOS」というサイトから引用します。

http://blogos.com/article/31175/?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

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そもそも、人気企業の採用数は意外なほどに少ない。それは好景気だろうがバブル期だろうが変わらない。

就職四季報から私が推計したところによると、過去20年間での最大採用年度は2009年入社(08年採用=リーマンショック前)の2万6100名となる。卒業生数が1学年当たり55万人だから、その5%に満たない採用規模だ。ここに学生たちはこぞって応募する。平均的な学生でも30社は受けるだろう。人気上位200社総なめ、などというツワモノも少なくはない。そこで、少しでも人気のある企業はすぐに応募倍率が100倍を超える。こうなると、狭き門の向こう側にいる企業は、大量の応募者に対峙するために、レッテルによる選別をするしかなくなっていく。

少し、シニカルに考えてみよう。

どの企業とて、応募者30名から一人採用すれば、自社にピッタリな人材は見つけられるはずだ。それを、100名に一人にしたからといって、より良き人材に出会える可能性は少ない。逆に、人数が多すぎて、一人一人をじっくり見ることができなくなる。そのため、返って選考が粗くなり、良い人物が採れなくなるともいえる。応募倍率が200倍を超えたりもしたら、もう、多すぎて、選考が全くはかどらなくなると容易に想像できるだろう。そこで、人事の間ではよくこんな話がされるのだ。

「仮に、採用数の200倍もの応募者が集まったりしたら、応募順に整理番号を振って、3の倍数の人だけを一次選考OKとしたらどうだろう。そうやって、3分の一に絞ってしまってから、じっくり見ていった方が、自社に合った人物が採用できるのではないか」。
普通は、この機会的選抜を、「学歴」や「経歴(体育会とか、生徒会とか)」で行うものだ。一般企業で営業要員として迎え入れるというならば、基礎学力やハート、組織適合性を見る上で、「学歴」や「経歴」というのは、機械的選別としては有効性が高いといえるだろう(少なくとも、整理番号での選別よりは、有意性が高いことは間違いない)。

岩波書店は2013年の新卒募集において、「コネ」による応募しか受け付けない、と言明した。毎年、若干名の採用に対して1000名を超える応募がある同社は、応募者過多で選考が不全となっているために、コネという手法で機械的選抜を行うというのだ。少なくとも、出版社と何らかの人的つながりを持つ、というのは、編集活動が好きか、編集者と近い関係にあると想像できる。「整理番号」での選抜よりは合理性が高く、また、とかく偏屈が多い編集の世界では、「生徒会歴」や「体育会歴」よりも優位性が高そうだ。世間的にずいぶん波風を立たせてもいるが、これとて、採用者側の論理としては成り立っている。

批判覚悟で、コネによる機械的選抜を打ち出した岩波書店は、天晴れというべきだろう。ただし、自由や平等を標榜して、弱者の側の視線を強調してきた同社が、「コネ」という一種の既得権益を活用することについては、少々違和感を感じざるを得ない。そのあたりは、同様に弱者の味方たる社民党が、党職員の不当解雇で訴訟沙汰となっている構図とウリ二つともいえるのだが。

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リンク&モチベーションの小笹社長なども好意的なコメントをネット上で書かれていました。引用はしませんが、城繁幸さんのツイッターはより過激でよかったです。

別に良し悪しを議論するつもりはないですが、エントリーシートひとつをとっても何を書けば合格するのかが提示されない就職活動の中で、明確な応募資格が提示されていることはすごいことだと思います。どう書けばエントリーシートが通るのかを悩むのはつらいですが、岩波書店の社員と知り合いになればいいという応募基準は極めて明快で、誰にでもチャンスがあります。もちろん以前から知り合いの人は何の努力もせずに応募資格を得られる点は不公平なのかも知れませんが、今から知り合いになれば追いつけるわけです。必死に知り合いの知り合いの知り合いを探す人もいるでしょう。ツイッターやフェイスブックも使えますし、本社近くで路行く人を飛び込みアタックなんてのもあります。
しかも、対象は社員だけでなく、著者まで広がっているので、やりよう次第では必ず見つかるはずです。また、見つけられるだけの行動力を見ているといえば、そうなのかもしれません。

ちょっと馬鹿げたように聞こえるかもしれませんが、表面的な情報をもとにして、そもそも論ばかりを振りかざして怒ったりする前に、これは新たなチャンスだとほくそえむこそができるような人材は、どこの企業でも欲しいんじゃないでしょうか。

ただ、明らかに岩波書店のやり方は稚拙ですし、初期対応なども逆に作用してしまったために、騒ぎが大きくなったといえます。マスコミ取材への対応もよくなかったみたいに感じられます。これは要改善点ではありますが、でも200人規模の会社の人事にそれ以上のことを求めること自体がなかなか難しい話でもあります。採用専任担当者が何人もいる大手企業の感覚ですべての世の中をみるのはやめなきゃいけませんね。必要なことはもちろんやらなければいけないのですが、企業の本分としては管理コスト倒れになるわけにもいきませんし。

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