人材育成部門の2つのミッション
月曜日に開催された『人材教育』誌の読者セミナー。このようなリアルな企画がいろいろと世の中では増えています。今回の企画は、内容的に非常に欲張って凝ったものでした。全体は3部構成になっており、しかも真ん中の第2部は二手に分かれます。都度都度、会場の模様替えがあり、スタッフの皆様は大変だったと思います。単なる導管教育にしないという意気込みがとっても伝わってきました。

第1部は一橋大学の守島先生の「今、人材開発担当者はどうあるべきか」と題するセッションです。2社の人事の方が守島先生の基調講演に続き事例を語り、さらにはパネルディスカッションへと進みます。この第1部だけでもかなり濃密です。

守島先生は、職場での教育と、人材教育担当者が施す(?)必要のある教育というテーマを取り扱います。もともと、特に日本における人材育成に関しては、職場が独自に行う部分がかなり多かったといえます。単に実務上のスキルだけではなく、スキル以外の面でも、職場での経験を通じて人を育ててきた傾向は強くあります。製造現場だけでなく、ホワイトカラーの世界でも普通にOJTという言葉が流通してきました。実は、研究分野としてOJTの分野が独立してあるのは日本だけだそうです。国際比較すると、日本の従業員1人あたりの教育訓練費が欧米諸国に比較してかなり低いのは、OJTが育成機能を担っていたからだといえます。これは明らかに日本企業の強みでした。

ただ、もうしばらく以前から、こういったスタイルでの育成の限界が指摘されています。その大きな理由は、職場における「良質な経験」が不足してきたことに求められます。
その理由として、守島先生は5つほどの項目を整理されていました。

①成果主義による過程・プロセスの軽視、リスク感の変化
②チャレンジ性のある仕事の減少
③人員構成(年齢、雇用形態)の変化による育成コミュニティの減少
④コミュニケーション手段のデジタル化
⑤仕事への忙殺

一番できる人にばかり仕事がまわってくるというのが、どこの会社でもいわれています。できるかもしれない人に仕事をチャレンジさせて育てるというリスクをとることがなくなってきました。その反面、できる人には疲弊しきるまで仕事が回ってきます。これでは「良質な経験」が多くの社員にもたらせられることはありません。かくしてOJTは機能しにくくなっていきます。

ただ、そもそも職場育成の基本的限界というのもあります。
どうしても職場では、現在価値や短期的な未来へ向けての育成を行う傾向があります。職場のみに育成を任せると、長期的な人材育成に取り組む機運は起こりませんし、そのノウハウも職場にはありません。ですから、完全に職場依存型の人材育成は、長期戦略を前提とした人材の供給には適さないわけです。企業の長期的な競争力確保のためには、職場での人材育成にすべてを委ねることはできないのです。

これらの認識を踏まえて、今、人材育成担当者に求められていることは、以下の2つです。

①現場での育成を再構築する
②長期的に必要なコア人材育成のためには戦略的に育成を行う

「現場での育成を再構築」するという仕事は、もはや人材育成というよりは、組織開発の世界です。ですから、人材育成担当者は、いまや組織開発担当者であらねばならないということになります。

この2つのことを人材育成部門のミッションとして再整理すると以下のようになります。

ミッション① 組織開発者としての人材開発者
ミッション② 戦略的人材開発部門…将来の自社にとって重要な戦略的人材をみつけ、企業として育て上げて行く

そして、守島先生は、これをやらないと人材開発という機能はかなり弱体化すると指摘されます。しかも、それは人材育成部門だけのことではなく、人事部門全体として捉えるべき問題だと感じます。

《2012年4月25日》 新入社員の初任給の日です。
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