就職面接での「挫折体験について」の質問を考える
細々ではありますが、大学生のキャリア支援に取り組み初めて随分になります。

大学生にとって、今の就職活動とはちょっとした怪物のように見えるところがあるのでしょうか。身の丈で動いても十分なのに、背伸びをしないといけないという先入観にとらわれ過ぎているなと感じることが結構あります。ですから、大学生にお話をする際もできる限り、日常の生活に気づきや学びがあることを伝える努力をしたいと思っています。

面接で話すこと、ESに書く「何か」ことがなくて困っています、という話はよく聞きます。でも、丹念に大学生活の話を聞いていくと、たいていは「何か」が出てきます。ただ、それをきちんと自分のものにするという点で十分でないので、自分で気づいていないのでしょう。経験学習のサイクルがきちんとまわせきれていない、ということなのかもしれません。ちょっともったいないです。
面接やESでは、はなばなしい活躍を語らなければならないという先入観があるのかもしれませんが、私たちがみたいのは「過去のはなばなしい活躍の実績」ではなく、「これから何をやってくれそうな人なのか」の方です。見た目は派手でなくても、ある経験からきちんと自分なりの学びをしている、それを糧に少しでいいので自分を変えている(=成長している)ことが何よりも大切です。遭遇した課題に、正面から取り組み、自分なりに考え、自分なりに行動して、それらの一連の流れから何かを学び取っている人であれば、社会に出でも同じように成長が期待できます。

たまたま今日、FBでつながっている大学でキャリアカウンセリングもされている方が、『就職活動中の学生からESや面接で「挫折経験について」問われても、思いつかなくて困っていると相談されることがある』という話を書かれていました。「挫折経験」は最近の採用面接ではとてもポピュラーの問で、多用する面接官は少なくありません。

でも、この質問にはいくつか、注意しなければならない点があります。それをちょっと整理してみます。ちなみに、私はこの質問は好きではありません。そして、自分が聞かれるのも好きではありません。

1.本当に深い挫折経験であれば、いかに就職のためとはいえ、初めてあった面接官に数分で語れるものではない。喜々として語られるものの多くは「なんちゃって挫折体験」ではないかと疑う必要がある。

2.ある体験を「挫折体験」だと認識するレベルは人によって大きくことなる。同じ仕打ちを受けても、「挫折体験」だと悲痛に受け止めて苦しみ続ける人もいるし、苦労しながらもそこそこ早くクリアしてあえて「挫折体験」だなどとまでは感じない人もいる。人として強いのは実は後者の人だ。ちょっとしたことでも「挫折」できる落ち込みやすいタイプの人が、能弁になれる可能性がある質問かもしれない。

3.前項2の前者の人と後者の人では、「挫折体験」と感じる閾値が違うわけだ。後者の人は前者の人が「挫折体験」と感じるようなことだったら、毎月のようにありますよ、なんてことかもしれない。だから、面接で「挫折体験について」聞かれても、そんな当たり前のことを話すなんてことを思いもつかないわけだ。

4.「挫折体験」に耐えたこと、乗り越えたことだけをもって、評価をしてはいけない。大切なのは、「挫折体験」をどうとらえ、自分でどのように打開策を導き出し、自らどう行動したか、それが自分の経験値としてどう積み重なっているかだ。ここでも経験学習の視点が必要になる。たまたま親が助けてくれたりした「挫折体験」では、その後の人生にあまり意味をもたないことも多い。

5.「挫折体験」はちょっと気の効いた応募者であれば、きちんと用意している。あまりにもポピュラーな問なだけに、ほんとうには「挫折体験」をしていない人こそ、自分の経験をややデフォルメしてでも「マイ挫折体験ワールド」を用意してくるのは当たり前のことだ。

6.一番いい人生は、いろいろとチャレンジしたけど、一度も「挫折体験」なんかしなかったよ、という人生かもしれない。鈍感力が強すぎるのも駄目だが、少々のことで挫折してしまう人よりは仕事はできるかもしれない。また、挫折を寄せ付けないような強い運をもっている人であれば、それは是非、採用したい人だろう。

と、やや極論的に「挫折体験について」の質問をするのであれば注意すべき点を書き連ねました。

就職面接で「挫折体験について」という質問が良く出るということをマーケティングでき、自分の今までの生活の中でそれにあたるものはあっただろうかとリフレクションできることは重要なことです。また、つらい過去に向き合えることも大切なことです。そして、本当につらいことを乗り越えたのであれば、それは自信に変えて欲しいことです。

最後になりますが、もしも私が大学生のときに就職面接で「挫折体験について」聞かれたら、たぶん上手には応えられなかったと思います。いろいろなことがありましたが、自分なりには乗り切ってきました。自己開示が苦手な人間ということもありまが、人に面と向かって「挫折です」といえるようなことは、なかなか思いつかなかったと思います。でも、私はちゃんと今、それなりに働いています。「挫折体験について」という質問に苦労した人、けして落ち込む必要はありません。もしかしたら、それは誇れることなのかもしれません。

ただし、想定される質問には回答できる準備はしてくださいね。

そうそう最後にもう一つ素朴な疑問です。なぜ「挫折経験」と聞いて、「修羅場体験」と聞かないのでしょうか。修羅場をくぐっても挫折していないツワモノは大勢いるはずです。まあ、学生に修羅場はあわないかな。修羅場をくぐることよりも、挫折することの方が大事だなんてことではないですよね。

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【2013/01/10 23:57】 | キャリア~学生・就職・採用 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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