「日本の人事賃金制度を振り返る」
日本における人事の歴史について知らない人事担当者が増えていますね。人事関連のセミナーも、ほとんどが今日的課題を右に習えで取り上げているばかりで、腰を据えて歴史を学ぶ場というのがなかなかなくなっています。

例えば、当社のメンバーにしても楠田丘氏の写真を見せても誰もわかりません。まあ、そんなものでしょうか。1994年に私が経営アカデミーの人事労務コースに参加した時、たぶん最初の合宿か何かの飲み会の時でしょうか、メンバーのうち何人もが楠田丘氏の物まねができ、ほとんどの人がそれを見て笑うことができていたのを思い出します。私は誰の真似をしているのか、まったくわかりませんでした。多くの会社には、楠田丘氏の考課者教育のビデオとかがあって、当然のように皆さんは見てたんですね。ご本人から直接、指導を受けていた企業も多くあったことと思います。

私は採用・新人教育だけを3年ほどやって、人事から営業に戻りたいと我儘いってた時期で、まあこれに行ってみろという感じで経営アカデミーにいかせてもらったので、その時点では採用と新人教育以外のことはほとんど勉強していませんでした。ですから、この経営アカデミーは実に新鮮でした。ここのクラスではいろいろと人事の歴史を学びました。また、諸先輩から呑みながら聞く、運用の苦労話、企画と運用の確執の話なども本当に新鮮でした。この仕事、面白いかも、と思うことができたのも、経営アカデミーのおかげです。そして、この仕事をやるためには、常に勉強しづつけなければいけない、そうしないと社員に対して本当に失礼なことになるなと実感したものです。

実際、無知な人事担当者は罪です。これは人事に限らずに、少なくともスタッフ部門のすべてにはいえることでしょう。例えば、私たちが新しい人事制度を創るときに、流行っている制度のパッチワークをしたり、コンサル会社の使いぱしりになったりしてはいけません。自社の環境と歴史と人材とビジネスモデルにあった制度は、結局のところ自分たちで捻りだすしかないのです。そのためには徹底的に勉強をしなければなりません。

その勉強の1つに人事の歴史を加えてはいかがでしょうか。もちろん、直接には役に立たないことも多いでしょう。でも、私たちの失敗と後悔の歴史は、新しいことを考えるときにも必ず役に立つはずです。そしてまた、日本企業の良さ・強さを再認識し、グローバルな時代だからこそ、両面を理解・把握してものごとを考える必要があるように思います。
古きに学べというよりは、思い切って新しいことをやるために歴史を理解する、新しいモデルを考案するために歴史を学ぶ、といった感じでしょうか。アイデンティティを守りながら過去と決別するために改めて過去を学ぶ、という感じでしょうか。学ぶことがこんなにたくさんある中で、歴史なんて直接に役に立たないことまで学ぶ時間なんかないという合目的的過ぎる学習観をちょっと横に置いて学んでみると、そこには例えば賃金理論、評価理論だけとってもさまざまヒントがあるはずです。

あと、こういうこともあります。例えば30歳の人が新人事制度を考える担当になった場合、同じ会社にいる50歳の人は20年も早く社会に出ているわけです。例え人事の仕事はしていなくても、それなりには20年分の人事制度の歴史を知っているわけです。人はどうしても過去と比較するものです。20年分の歴史を多少は理解した上で、50歳の人にも伝わる仕組みを考えることは、意味のあることだと思います。もちろん、それで何かがぶれることは良くはありませんが、ちょっとした仕組みや打ち出しで、いろいろなことが変わってきます。

私にしても本当に争議が激しかった時代は知りません。でも、入社した頃はまだ組合が闘争時期になると組合旗を掲げてましたし、意味もわからず腕章とかもさせられました。また、子供の頃の記憶として、国鉄や私鉄のストで学校が休みになって喜んだこともありました。今の若い人事担当にこれをイメージしろといっても無理ですね。また、戦後の日本がまず採り入れようとした制度が職務給であったことを知らない人事担当者も多くいます。職能給というのは明治時代からあったものではないのです。逆にいずれ日本には職能資格制度という仕組みがあったということを知らない人事担当者が多数になる日も来るかもしれません。ただ、職能資格制度を理解せずに、ランクやグレードの仕組みを再構築するのはちょっと危険ではないでしょうか。

時折こんなことを考えるのですが、実はうってつけの企画に出会いました。

産労総合研究所が発刊する「賃金事情」の最新号です。何とこの雑誌、創刊75年を今年迎えるそうです。驚くべき歴史を誇る専門誌です。

今回の特集が「日本の人事賃金制度を振り返る」。

ここに書かれていること程度のことは理解しておいて損はないはずです。2つの対談が掲載されていますが、今の人事担当者にも役に立つ目線を多く提供してくれています。そしてまたこの特集が何よりも秀逸なのは、1945年から2012年までの人事・労務・労使関係に関わる年表がついていることです。これはまさに日本の歴史でもあります。さらには時代の変化を目で感じられる統計グラフも合わせて掲載されています。

歴史というものは、知っている者が知らない者に伝承しない限りはいずれ途絶える宿命にあります。本年表を書かれた方のような方々が、若い世代に歴史を語り続けることは大切なことです。そこからひょっとすると世界に通用するオリジナリティあふれる仕組みがまた生まれる可能性だってあるはずです。

本誌の企画の巻頭にある言葉です。
「ここで一度、過去を振り返る作業を行い、未来を考えるための土台を築きたい」。

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