情緒的(?)なラーメン本「日本初の女性ラーメン評論家になっちゃいました!」
いつ頃からでしょうか、ラーメンが情緒的ではなく、分析的に食されるようになったのは。

多くの人に「あの時のあの店」というラーメン店があります。ラーメン店にはストーリーがあるのです。高校の帰りに良く寄った店、残業のあとに仲間と頻繁に立ち寄った店、親によく連れられていった店、頻繁に足を運んだ得意先の近くの店、大学生の頃に住んでいた街の店………。けして世間で名店といわれたり、雑誌に取り上げられたりしない店でも、自分にとって最高の一杯を出してくれた、そんな店があるはずです。何度もなんども通い詰めた店です。実に情緒的な話です。

近年のラーメンブームは、まさに驚愕の状態です。ラーメン店主が脚光を浴びるようになって久しいですが、製麺店名がブランドになり。小麦粉の銘柄までラーメンサイトに書きこまれるなんて、私が小麦粉の営業をやっていた時分には想像もつきませんでした。先日、神保町近くのラーメン店で日清製粉の「オーション」の袋が額に入れられて飾ってあったのには、もう声が出ませんでした。強力2等粉ですよ。「ラーメン二郎」が使っているのは昔から知られていましたが、けして戦略的にプランディングされた小麦粉ではありません。他にも業務用の25㌔の小麦粉大袋(おおたい、と読みます)をディスプレイしている店舗も非常に多くなりましたよね。ほんと凄いことです。

そんな中で、ラーメンは情緒的な食べ物から、分析的な食べ物に変貌を遂げつつあるように思います。分析的というのは、情報集約的というか、ラーメンというトータルの食べ物を愉しむよりも、このスープはどこ産の何でダシをとって、とっておきの○○を隠し味に使って、あの××製麺の特性麺に全粒粉を配合した麺に、具材は△△でわずかにしか採れない□□を用いて、なんて感じです。一般の方が製麺機の切り刃の番手を指摘したりもします。もう情報過多で、なかなか情緒に浸っている余裕がありません。

そして新店がもの凄い勢いで乱立していきます。しかも、美味しいレベルの高い店が実に多いのです。また、昔でしたらあの店は味噌、あの店は塩というように、そこに行けばあれを喰えという王道メニューがあったのですが、今では1つの店で食べたいスープが3種類もあったり、つけ麺にまぜそば…、こういう状況になっていると、いっつものあの店をつくるよりも、1店でも多く新店を回りたいという気持ちにどうしてもなってしまいます。私も昨年は200食弱食べてますが、重複店は数えるほどです。ラーメン本を買うと新店だらけ。ラーメンサイトを検索しても新店が気になり、情緒に浸っている余裕がありません。

情報過多は実に世の中を消費的にします。長らく続いた魚介臭の強いつけ麺店ばかりが新店で開かれるというのが収まったと思ったら、どこもかしこも二郎インスパイアになったり、そして今は鶏・鶏・鶏っ感じですよね。ラーメンは実に口コミが似合う分野だと思いますが、それが流行迎合的な流れを助長すると、本当にしみじみといいことやっている人が浮かばれなくなったりもしかねませんし、何よりもおっかけざるを得ない気持ちになるラーメン好きも少々疲れます(嬉しいんですが)。急な混雑がオペレーションと味を乱し、結果、常連を失って衰退していくというのは、ラーメン店に限らず飲食店の悲劇ストーリーの1つでしょう。

前置きが目茶目茶長くなりましたが、そこでこの本です。ラーメン女子大生として、よくラーメン官僚さんとテレビに出ていたのが印象に強く残っている本谷亜紀さんが出した「日本初の女性ラーメン評論家になっちゃいました!」。当然ですが、店舗紹介をきちんとしているラーメン本なのですが、紹介内容が1つひとつエッセイのようになっており、実に情緒的でいい感じです。他のラーメン本が1店でも多くの店を紹介しようという誌面になっているのに対して、店数も極めて限られています。そのかわり、1店1店について自分との関係性にも言及して丁寧に語られています。そう、実に情緒的なラーメン本に仕上がっているのです。ラーメンってこういうもんだよね、という本です。ムック本ではなく薄いけれども単行本形態で、ちょっとエッセイ集に近いのりでもあります。

例えば、「桂花」や「春木屋」なんて当たり前過ぎで多くのラーメン本では、いまや完全にスルーしているともいえますが、「桂花」は母親が好きな店、「春木屋」は父や兄が好きな店といって暖かく紹介されています。「桂花」なんかは私もある時期を思いだす大切な店ですから、いやでも共感してしまいます。もちろん「評論家」としての分析的な目線もきちんと保たれています。

女性ラーメン評論家っていないんですね。お好み焼きだとわが「にっぽんお好み焼き協会」の会長自身が女性の佐竹さんですし、「古典酒場」の編集長の倉嶋さんも女性、ラーメンは空白地帯だったということでしょうか。最近では1人で二郎に並んでいる女性もたまに見かけますので、かなり変わってくるでしょうね。

成城大学の「汽水域」にお邪魔する前に、駅からだいぶ歩いた「ろんとん軒」に初訪して駅に戻って駅の三省堂でこの本を買いました。買ったことをツイートしたら、すぐにRTいただき「成城ならろんとんけん」とそこにありました。成城でラーメンを食べたことはおろか、いった店の名前なんかつぶやいてやいないのにすごいシンクロです。そういう何かがある人って、きっと何かをやれるはずです。おそらく普通に会社にお勤めしながら、ラーメンの仕事をされているのではないかと推察しますが、最低限の睡眠時間だけはとって頑張っていただきたいと期待します。

日本初の[女性ラーメン評論家]になっちゃいました!日本初の[女性ラーメン評論家]になっちゃいました!
(2013/01/30)
本谷 亜紀

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