「空間亀裂」フィリップ・K・ディック著 創元SF文庫
フィリップ・K・ディックは、1982年、私が大学生の時に亡くなりました。社会学部を卒業する際の卒論のタイトルが「日本SF史」であるくらいSF好きで、SF小説を読み漁っていた頃です。ディック作品は、ハヤカワSF文庫、創元SF文庫からも多数発刊されていましたが、1987年に幕を下ろしたサンリオSF文庫から21冊と大量発刊されています。なかなか新刊本で購入る資金力がなかった高校生・大学生時代は、古本屋を歩いて、見つけ次第、購入していました。

既に30年以上前に亡くなった作家ですから、新刊本というものを読むことはできません。でも、海外作家については未訳本というものが少なからずあり、ディック本も没後に細々と未訳本が発刊されています。そして、ごくわずかですが未だに未訳のままの作品が残っています。

長らく未訳本でいたということですから、必ずしも評価が高くなかった作品なのだろうと想像が容易につきます。しかし、ディック作品には強烈な固定客が多数いますから、出せば出したでそこそこは売れるだろうとも想像がつきます。そんなこともあり、忘れかけた頃に、新たな未訳本が世の中に出て、私たちファンを楽しませてくれるというのが、もう30年間も続いています。

未訳本だけでなく、ディックの短編が没後に次々と映画化されています。
「マイノリティ・レポート」「ペイチェック 消された記憶」「スキャナーダークリー」「NEXT」「アジャストメント」「クローン」「スクリーマーズ」、そして昨年リメイクされた「トータルリコール」。まだまだ私たちはディックの新しい世界を味わうことができるのです。

さて、本作品ですが、人口爆発に悩む近未来の世界。生活ができない人々はコールド・スリープを選択して凍民となり、いずれくる他惑星への移住が叶う世界を待っています。そんな中で、異世界との時空の切れ目が見つかります。まさにタイトルとおりの「空間亀裂」が現れるわけです。アメリカ大統領選におけるメディア戦略合戦、著名医師のスキャンダル、未だ残る人種差別、人工冬眠と臓器移植、売春人工衛星、北京原人とのコンタクト、惑星のテラフォーミング、といった具合に、あれやこれやとエピソードやSF的ガジェットが投げ込まれます。チープ感に溢れ、箱庭的ご都合主義が満載ではありますが、久しぶりに読む「新作」、いにしえのSFのテイストに満ち溢れ、けして駄作でも問題作でもありません。1ページ1ページを愛おしく読み終えることができました。

空間亀裂 (創元SF文庫)空間亀裂 (創元SF文庫)
(2013/02/27)
フィリップ・K・ディック

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