毎号、濃厚な中味が続いている「人材教育」誌ですが、5月号は「働きがい」がテーマ。どうも「働きがい」とか「やりがい」という言葉でのまとめって、あまり好きになれないところがあるのですが、とはいえ個々の記事はいつものように読み応えのあるものでした。
その中から1つ、備忘録として残しておきたいのですが、あの分厚い「U理論」を翻訳された中土井僚さんが、「働きがいを丁寧に捕らえて4つのバランスで高めていく」という文を寄せられています。この「4つのバランス」とは、仕事のモチベーションに影響を与える4つの認知のことであり、トーマス&ベルトハウスがエンパワメントに関する論文の中で提唱した「タスク・アセスメント」という概念がベースになっています。 「タスク・アセスメント」においては、働きがいというものを人が感じる場合、与えられた仕事の内容そのものよりも、本人がそれをどのように認知しているかということが重要だという考え方が前提になっています。日頃、メンバーのマネジメントをしている人であれば、何となくうなずけることではないかと思います。また、自分に照らし合わせて考えてみると、まさにその通りです。別にひねくれ者ではなくても、どんなに多くの人に祝福されても、嬉しくも何ともないことってありますよね。 働きがいに影響を与える認知は4つに大別されると整理されています。1つずつ見て行きましよう。 ①.自己効力感 お馴染みのやつですね。一言でいえば「自分でできるな」と感じることです。「それは自分にはできないよ」「僕にはちょっと無理です」と思っている状態は、自己効力感が低い状態です。ちょっと大変でもやればなんとななりそうだと思えることが大切なのですが、なかなかそういうスタンスになれない人は少なくありません。 ②.影響感 それをやった結果や報酬が、何か意味のあるものであるかどうかという概念です。具体的に効果や見返りをイメージできるかどうかです。何かをやり遂げたことによって、何かが明確に変わるかどうかです。予測される成果にきちんと合理性があるかどうかともいえます。「これやって何の意味があるの?」と思っている状態は、影響感の低い状態だといえます。 ③.有意味感 何かをやって得られる報酬や結果が、その人にとって意味があることかどうかです。同じ報酬や効果であっても、その捉え方は人によって千差万別です。有意味感は影響感と似た概念ですが、影響感というものが、合理的・客観的な概念だとすると、有意味感というのはパーソナルな概念です。「それをやることにすごい価値があるのは十分に理解できるけど、俺はあんまり意味を感じないね」というのは、影響感は高いけれど、有意味感が低い状態だといえます。価値と意味の違いといっていいかもしれません。 ④.自己決定感 言葉とおり、自分でどれだけ決めることができるかですね。すべてが命令で動かされるのではたまりません。自己決定感への渇望は個人差がかなり大きいようです。 4つのタスク・アセスメントは強弱こそあれど、誰にでもいずれも当てはまるところがあるものでしょう。例えば、ある仕事を担当する段になって、なかなかやる気がなかなか出ない部下がいるのであれば、この4つのタスク・アセスメントの何が特に欠けているのかを考えることは大切そうです。それによって、上司としてアドバイスする処方箋がまったく違うからです。有意味感の低い状況の人に、その仕事の価値と重要性をとうとうと問ても逆効果かもしれません。自己効力感の低い人に影響感でアプローチするのも、たんにプレッシャーが増すだけかもしれません。 自己効力感、影響感がネックになっている人には、それなりの常套的手段がありそうですが、有意味感がネックになっている人は、かなり難しいですね。おそらく組織の中であるレベル以上の立場になってくると、どうしても有意味感、自己決定感でジレンマを感じる場合が増えてくるのではないでしょうか。 いうまでもなく、この4つのタスク・アセスメントは、自分のやる気調整にも使えます。 ![]()
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