受益者意識が強い学生、そして社会
台風で足止めを食っていたので、お昼過ぎまで山積みになっていた資料をあれこれ読んでいました。その中から1つ、大学関係者等への聞き取り調査から整理された「近年の学生の傾向」というのがあったので、整理してみました。定性調査の結果を少し抜き出して箇条書きにしただけですが。

○主体的な情報収集リテラシーが低下している……何かの目的をもって具体的に自分達から情報を集める力が低下。検索ワードを何にすればいいのかが思いつかない。受動的に得た情報や、他者の個人ブログに記載されている内容を鵜呑みにしがち。

○日本語文章力が低下している……ツイッター、ラインなどの影響で、単語単位でのコミュニケーションに慣れており、長文や起承転結のある文章が書けない。お手本となる良い文章・良い言葉を目にする機会が少ない。

○知的タフネスさが低下している……受験テクニックで「満点を取る必要はない、難問は捨ててとれるものを確実に取れ」と指導されている影響か、答えのない問にぶつかると、考えることすらを放棄しがち。

○飛び出す力が不足している……単純な質問に手を上げるだけでも周囲の様子を伺う傾向が強まっている。以前は自分の意見を人前で話すのは「恥ずかしいから」抵抗を示していたが、最近は他者から批判をされることを恐れ「怖いから」意見を言わないという傾向がある。

○いつどこで具体的・短期的にどう役立つのかの明確な説明、納得がないと動かない……根深い受益者意識がある。説明されて当然と考えており、学びがどう役立つかを自分で考えない。合理的ともいえるが、すぐに役立つ分かりやすいものにしか反応せずに、短期的・短絡的。逆にいえば、具体的なイメージを持たせ続ければ動機づけることができる。

○長年、目標は与えてもらうものであり、それを言われたとおりにこなすと賞賛されるというワンパターンの経験を積み重ねている。

○HOW教育には慣れているせいか、教えてもらったテクニックはすぐに身につけ、要領よく物事をこなすスキルは高い。

○就職活動に役立つ知識・スキルは1年生の時から叩きこまれているので、ある側面ではとても優秀……プレゼンの四方、テーマに応じたディスカッションの進め方などは大学1年生から訓練をされている。ITツールの発展により、受動的に得られる情報量が増え、世の中の出来事は意外といろいろと知っている。

○感動体験によって一気に動機つけられることもある……運よく本物のプロフェッショナルの提供する最高のモノに触れると、感動し、これまで持ったことのない夢や憧れを感じ、一気に動機付けられることがある。

○頑張れは届きそうなロールモデルが具体的あるいは身近にいると動き出す

○上位校の学生ほど「大手有名企業に入ること」を親や学校に目的化され、1年生からHOW教育を受け、その通り実践して褒められてきた経験を積んでいるため、受益者意識とHOW教育への感度が高い傾向がある。

○上位校の学生は自分たちが甘やかされて育ってきた認識を持っているため、インターンなどで社会の厳しさを学ぼうという気持ちが強いが、サービス化されている大学の手厚い対応の中で行われるインターンであることを理解できずに、これで社会の厳しさを十分に知ったので大丈夫と考えてしまいがち。

○多様な価値観を受け入れず同一性を強く求める日本社会に対して、あきらめに似た感情を持っている……グローバル化が進み、多様性が求められる時代になっていることは理解し、英語学習への意欲も高く、海外に短期留学にいく学生も増えており、SNS等を通じて外国人とのコミュニケーションを愉しんでいる学生は多い。大学1~2年生の頃は、壮大な夢・価値観を持っている人もいるが、就職活動の時期になると現実を理解し、日本社会が依然として同一性を求める傾向にあることを知り、一気に思いが急速冷凍される。

キーワード的に出てくるのが「受益者意識」という奴です。別の調査では「消費者意識」という表現で似た概念を扱っていました。少子化の影響で1家庭あたりの子ども数が減少し家庭における過保護状況が強まっただけでなく、大学のサービス業化の影響から、何事も与えられるもの、きちんと説明のあるものという状況に慣れてしまっていることを指す表現です。

あらためて読み返すと、この「受益者意識」を含めて、彼らは社会の鏡であることを強く感じます。例えば「受益者意識」は大学生だけの話ではなく、社会全体を覆っている現象です。例えば、街を綺麗に維持するのは、街に住む人たちの役割ではなく、行政の役割であるという意識は強まっています。私たちは気づかないうちに、この受益者意識を強めています。これは豊かさと分業化・専門化の進む弊害だともいえるでしょう。

社会を動かすキーワードは、「曖昧」「理不尽」「多様性」「答えがない」です。東京中のどこにいっても「おもてなし」があるなんて勘違いしてはいけません。いずれにしても「受益者意識」ばかり強い国民が増えてしまっては、国家財政は成り立ちませんし、得られるサービスの益を維持するために増税をどんどん進める必要もあります。また、賃金というのは、誰かに何かのサービスを提供した報酬として得られるものですから、強い「受益者意識」はいうまでもなく、働くというスタンスを歪めます。強い「受益者意識」は「他責思考」につながりやすいものですから。

DSC00458.jpg
関連記事
スポンサーサイト
【2013/09/16 19:44】 | キャリア~学生・就職・採用 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
<<就職協定は1928年の紳士協定まで遡れる | ホーム | 過去を評価するのではなく、将来を買う>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
→http://jqut.blog98.fc2.com/tb.php/1836-3e500cad
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |