はたらきたい、採用母集団、マン・オブ・スティール
今更ながらですが読みました。「ほぼ日の就職論 はたらきたい」。今年の6月に開催された「はたらきたい展」に行けなかったので、その代わりにと思ってその頃に買ったのですが、なんとなく読まずにいました。

本書が書かれたのが2008年、私が手に取った新装版が出たのが2010年、5年前と3年前になります。面接試験の傾向と対策に終始しながら大企業を目指す就職活動のおかしな点をとらえ、5つの対談と、128のフレーズで構成されている本です。就職よりも、はたらくがきちんと前面に出ています。

本書での河野晴樹氏との対談にあるように「大切にしてきたことは何ですか」というのが、面接における最高の質問であることは同感です。私たちはスペックを選ぶのではなく、仲間を選ぶのですから。でも、マスの世界の海の中で、そういう「思い」と一緒にきり揉みされながら溺れていく感覚を多くの採用担当者は刹那刹那に感じることがあるでしょう。一人ひとりの目の前の学生ではなく、「母集団」と表現される塊で学生をとらえなければならない「マスの世界」、ある規模以上の企業であれば、ここと無縁であることにはもの凄い体力が必要です。

5つの対談のうちの一つは、様々な分野で主にフリーで活躍している4名(板尾創路氏、ピエール瀧氏、天久聖一氏、浜野謙太氏)とのものでした。本題とはずれるのですが、その中で印象的だったことに、フリーだとクレジットカードを作るのが大変だ、フリーだと不動産の契約がなかなかできないというものがありました。話には聞きますが自分自身なは実体験がないので、どきっとしました。組織に属してるということの凄さ、ありがたさ、組織に属さない人に対するこの国の世の中の厳しさを改めて感じます。そして、会社というのはこの国の代表的な組織形態です。

他には、しりあがり寿氏(元キリンビールの社員だったんですね)、金井壽宏先生、矢沢永吉さんと、バラエティに富んだ対談が続きます。どちらかというと、インサイドから就職を論じているのは、河野氏と金井先生だけであり、そこがこの本を特徴つけています。そして、河野氏と金井先生の話があるのにもとても意味があります。

繰り返しになりますが、本書が書かれたのは5年前、新装版が出たのが3年前です。それから多くの人が今の就職活動に対していろいろな発言や行動をしていますが、今のところこの強固な壁は崩れるそぶりをみせません。1928年代すでに就職マニュアル本があったということですから、3年や5年で何かが変わると思う方に無理があるのかもしれません。でも、毎年、毎年、いろいろな兆しはでできていますし、発言や行動をする人は増えていますし、(予算に任せてというようなやり方ではなく、知恵を振り絞って)チャレンジングな取り組みをする企業も増えています。これは事実だと思います。

ただ、まだ何かが足りないんだよなぁという気持ちを最近はしています。ここのところ映画漬けですが「スタートレック」をみても「マン・オブ・スティール」をみても「ウルヴァリン」をみても、それが何なのかには近づけません。当たり前です、そういう映画ではありませんから。それにしても、彼らのように強い意志と使命感と愛をもって誰しもがいつも生きていけるというわけではありません。でも、そうそう、ちょっと考えるところはありました。

この手の映画をみると、名もない人が多く犠牲になることがいつもちょっと気になります。主人公の最愛の人は幾多の危機を乗り越えて、たいていは最後まで生き残ります。ハッピーエンドです。しかし、それを勝ち取るまでの様々な過程で、名もない人が大勢犠牲になるのです。「マン・オブ・スティール」では、愛にあふれる戦いの中で、多くのオフィスビルが壊され、おそらくそこにいたであろう映画の中では名もない膨大な数のビジネスパーソンが犠牲になっています。

マスの採用活動管理には、「母集団」管理という発想がはずせません。3万人あるプレエントリーの母集団を面接可能な2000名に絞るためにはどうしますか、という感じの奴です。ここで使う「母集団」という言葉には、映画の中で亡くなっていく名もない人と同じテイストがちょっとあります。これは企業側の論理です。その企業の映画の中では内定を出した人だけが、主人公の仲間です。他は、あくまでもその他大勢です。

でも、学生側の論理は違いますし、違わなければなりません。自分はあくまでもこの世界にひとりだけです。良くも悪くも世の中は自分中心に回っていますし、自分のまわりで回し続けるということが生きていくことだともいえます。自らをマスの採用世界の海に飲み込まれるに任せるのではなく、この採用戦線の中でも一人の個として存在し続けることは大切なことです。

自分で書いていてもよくわからない主張なのですが、そういう感覚が広がることが、何かの解決に結びつくのではないかというような気がします。たぶん、そういう感覚が広がった世界では、就職マニュアル本の販売数はちょっと落ちているのではないかと思います。これは85年をかけて日本がまだできていないことです。

よくあることですが、書こうと思っていた書籍紹介から、3光年くらいはお話がずれました。

新装版 ほぼ日の就職論。「はたらきたい。」 (ほぼ日ブックス)新装版 ほぼ日の就職論。「はたらきたい。」 (ほぼ日ブックス)
(2013/06/05)
ほぼ日刊イトイ新聞

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【2013/09/23 19:55】 | キャリア~学生・就職・採用 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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