学びマトリクス ~キャリアマネジメント委員会より
なかなか意欲的な活動を続けられているインテリジェンスHITO総研ですが、昨秋からキャリアマネジメント委員会なるものを立ち上げ、私もメンバーとして参加させていただいてきました。そのアウトプット企画として、2回にわたって「キャリアマネジメントHITO公開討論会」が開催されます。第1回は若手キャリアをテーマに昨日の金曜日に開催され、第2回は中高年のキャリアをテーマに木曜日に開催予定です。

内容盛りだくさんの企画ですが、私は10分間のショートプレゼンとパネラーを担当し、その後のグループディスカッションにも入らせていただきました。当日は40名くらいの方がお集まりになったのではないかと思いますが、事前に予告せずに終了後に懇親会を開催しましたが、何とほとんどの方が残って参加されるという状況でした。このテーマに対する関心が感じられることと、このようなテーマに集う人の性向がよくわかります。

キャリアマネジメント委員会では様々な議論が戦わされましたが、比較的早い段階からキャリアと「学び」を結び付ける議論が中心となりました。そして、概念としてのアウトプットとして「学びマトリクス」なるものを提示し、今回の4名のメンバーのショートプレゼンは「学びマトリクス」を中心にしたものとなりました。

学びマトリクスは、横軸を「未来成果を重視するか否か」、縦軸を「能力開発行動を行っているか否か」でとった4象限のマトリクスになります。それぞれの象限にキャッチーな名称をつけています。

スライド1

ここでいう「未来成果」はどちらかというと、個人の未来成果ということではなく、組織としての未来成果になります。ですから、より単純化して説明すると、学んでいるかいないか、その学びは組織の方向性に合致しているか否か、で4象限に区分しているといえます。

名称についてはいろいろと議論があったのですが、ラーニング・リアリスト、ラーニング・ロマンチストの双方ともに、かなり皮肉的な名称になっています。未来をきちんと定めて、そしてそれが組織の求める方向性と合致していて、それを目指して学ぶというのは大切なことです。これがラーニング・リアリストです。学ぶということに注力しながらも、それが必ずしも未来成果に結び付かないのが、ラーニング・ロマンチストです。越境学習にいそしむ人達の多くは、どこからかラーニング・リアリストの道を踏み外し、ラーニング・ロマンチスト化しているところがあるのかもしれません。パネラー、会場ともに、何となくその場に集まっている人の多くは、ラーニング・ロマンチスト的な志向が強かったようにも感じられます。

このあたりは企業の特性、業界の特性によっても、捉え方が変わります。何が未来成果を生むのかが明確になっている企業であれば、ラーニング・リアリストを育てることに注力することは極めて合理的です。でも、その反対で経営陣すら次に企業に富をもらたすモデルが何なのかをわからずに常に走りながら考えているような企業であれば、ラーニング・リアリストを育てるプログラムをつくることは実は困難であり、場合によっては危険です。逆にラーニング・ロマンチストが学んでいるものの中から、突然に未来成果が生まれてくるのかもしれません。実はこの2つは固定的なものではなく、流動的なものなのです。未来成果の軸が企業によって異なり、時によって異なるのです。だからキャリアは面白いのです。

いずれにしても、このモデルはキャリアをドライブするものを「学び」に求めるものです。これは一社会人としてはとても腹落ちしますし、人材育成を生業とするものとして落ち着きのよいものです。何か自然と前向きですし、ドライブ要素が手の届くものであることがわかり何となく安心します。私たちは自分のキャリアをどうドライブすればいいのかわかりません。ドライブする要素が「学び」だという語りは安心感を与えます。学ぶことによって不安を払しょくすることができます。でも、本当にそうでしょうか。

どこの象限に移動できれば、ハッピーなどという簡単な話ではないのです。やみくもに学べばいいというものでもないのです。

私のショートプレゼンの中で、花田光世先生のダイナミックプロセス型キャリア論を冒頭で引用させていただきました。これは社会人として、実に腑に落ちる整理です。

「キャリアとは、ワークライフインテグレーションの軌跡(過去)とロードマップ(将来)の道筋であり、人生を能動的・ポジティプに生きること、生きざま」

「世の中は、自己実現やキャリアアップの獲得を可能にするほど甘くなく、むしろ残酷で、理不尽で、矛盾に満ち、そして予測不可能」「その中で自分の可能性に向かって努力、自分の可能性を拓くという姿勢が重要になる」「生きる目的とは何かを考えるのではなく、今生きているという現実に立ち、そこで自分らしさを発揮し続ける意識や行動が重要に」

この捉え方と「学びマトリクス」を合わせて考えることによって、「学びマトリクス」は初めて深みを得ることができます。「生きる目的とは何かを考えるのではなく、今生きているという現実に立ち、そこで自分らしさを発揮し続ける意識や行動が重要」という指摘は、日々の私たちに鋭く刺さります。「自分らしさを発揮し続ける意識や行動」の大きな1つが能動的に何かを「学ぶ」ということだとしたら、この4象限の何が良いとか悪いとかいう議論は意味をあまり持たなくなるでしょう。

今回は若手のキャリアがテーマだったこともあり、能力開発行動無の下の2つの象限の話はほとんどでませんでした。次週の中高年のキャリアの議論では果たしてどうなるでしょうか。愉しみです。

「学ぶ」ということは外界から新たな刺激を取り込んで自らを変える行為です。人間以外の生物は、これを生存本能でやっています。その意味では人間以外の生物はすべて「ラーニング・リアリスト」だといえるかもしれません。学習をしなければ種が絶えるリスクすらあるわけです。でも、私たち人間も1つの生物として、「学ぶ」ことが自らにとって最大のセーフティネットなのだとも考えられます。であれば、若手の育成に立ち会う人事担当者としては、「学ぶ」ことに若手社員をドライブすることは大切な役割です。何を学ぶか、どう学ぶか以前に、学ぶということも大切さ、効果、意味、愉しさのようなものを早いうちに身体で体感することができれば、彼ら彼女らは生きて行くことができるのだともいえます。

まだまだ曖昧な理論構築ですが、いずれにしても素晴らしい社外の仲間と1つのテーマを深めるという場は、大変な学びになりますし、自分自身の仕事を考える上でも果てしないヒントをいただけるものです。








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【2014/02/22 19:33】 | キャリア~全般 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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