「活躍する組織人の探求」中原淳/溝上慎一編 ~書籍紹介2014-04~
中原先生らの共著による横書きの学術本です。ちゃんとした書籍紹介には程遠いですが、僭越ながら取り上げさせていただきました。このテーマ、やっぱり私のライフワークの1つなのです。

中原先生の前著「研修開発入門」は驚くほど読みやすかったですが、こちらはけしてそんなことはありません。なにせ横書きの本です。本書で扱うのは、「大学から企業へのトランジション」。私も個人的にずっと追いかけている分野だともいえます。2006年頃からこのテーマについて、CDCという社外の仲間と取り組んできました。この付き合いはまだ続いています。

確かGCDFで習った奴に、レビンソンの発達段階と過渡期というのがあったと思いますが、年齢が進むにつれ、発達は段階的に進み、発達段階にはそれぞれ過渡期(トランジション)が現れ、一般的な男性においては下記のようなものがあるという話だったと思います。

①社会にでる前後の過渡期: 親・社会に見守られ生きるのではなく、自分で開拓しなければならない自覚を持つ
②30歳前後の過渡期: 可能性が有限であることが実感される時期。焦燥感、さまよい感が課題となる。
③40歳前後の過渡期: 人生最大の過渡期。過去が守り切れない恐怖感の中で真の自己との折り合いをつける。
④最後の過渡期: リタイア前後。前向きな意味での死の受容と、新たな役割・生きがいの獲得。

で、本書はこのうちの「①社会にでる前後の過渡期」の時期を扱った本です。

ただ、読んでいると少し不思議な感じに陥ります。データ分析の結果や、先行研究分析からこの時期を解き明かすのですが、いずれの話も「そんなの肌感覚的に当たり前だよなぁ」というような素朴な気持ちが時折、出てきます。これは以前に自分たちが研究をしたときにも陥った感覚であり、ある意味では「当たり前の原野を少し綺麗に整備していく」ような感覚になりました。

例えば「キャリア意識を大学1・2年生の頃より高く持つこと自体が組織社会化に影響を及ぼすし、また自主学習や主体的な学修態度を媒介として、やはり組織社会化に影響を及ぼすことが明らかになった」と本書にもありますが、これは多くの方が以前から感じていることでしょう。この感覚的なものに、理論をつけることは大事なことなのですが、また逆に感覚的なことが結構、まかり通っているのが採用まわりの世界だったりします。ここに一石を投じているのが本書なのだと思います。ただし、どうやら意外と何物のようです、この分野。

感覚が勝って、理論が輝きにくい分野、これがこの分野なのかもしれません。

中原先生によりますと、この時期を扱った研究というのはとても少ないそうです。
大学生活の過ごし方、採用、企業での活躍という分野は、学問に馴染みにくいのかもしれません。このプロセスで対象者は組織基盤を変えますので、数年単位での同一人物のデータを取得するというのがかなり難しいという制約もありますし、そもそも日本の就職・採用は世界のそれとはまったく異なる習慣にあるので、欧米の先行研究があまり意味をなしにくいなんてこともあるかもしれません。

ただ、本書はそれへの偉大なるチャレンジですし、これに続く研究を中原研究室では続けているようです。また、横浜国立大学の服部先生のように「採用学」という言葉を持ち出す方も出てきました。人事の分野では、もっとも学問・研究といった世界と縁遠かった分野にも陽が当たるのは素敵なことですし、刺激的なことです。ですから、私たちも当たり前だと思っていたことが、どうして当たり前なのか、本当は違う側面もあるのではないかといった視点から日々の「感覚的な判断」を見直してみるのもよいことです。

今から考えると私たちが取り組んでいたCDCの研究自体がかなり感覚的な部分もあったように思いますが、実務の中で感覚的に得たものを少し研究っぽく料理するということをやってきたのかと思います。勝手にノスタルジックに浸って過去のブログページを読み直したので、以下にリンクを貼っておきます。2年に渡って、大学生は大学生活の何によって成長しているのかを研究した初年度の素人発表のレポートの2年目の部分になります。

2008年10月05日 大学生活で社会人基礎力は伸びている
2008年10月06日 学生の成長に影響を与える人のタイプ
2008年10月07日 経験の印象から
2008年10月08日 大学時代の経験と学習の因果関係
2008年10月09日 経験学習モデルから
2008年10月10日 好奇心がキーワード

日本の新卒採用は極めて特殊です。私はこれに反対をする気も、これを固持していきたいという気もありまません。ただ、今までの当たり前にとらわれるのだけはちょっと嫌だなという気持ちがあるだけです。

今回のブログを書くために、過去ブログを「トランジション」というキーワードで検索してみたところ、2010年の7月に「内定時期というトランジション」というブログを書いていました。実は内定時期をテーマにした企画を経営学習研究所でやりたいと思っています。というか、6月か7月にやります。過去のブログをみるとあまり自分が進歩してないなぁと改めて思ったりもするのですが、いろいろな方の知恵をお借りして、面白い企画に仕上げたいと思います。

企画のタイトルを決めあぐんでいたのですが、「内定時期というトランジション」に決めました。過去の自分に感謝です。

活躍する組織人の探究: 大学から企業へのトランジション活躍する組織人の探究: 大学から企業へのトランジション
(2014/03/28)
不明

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