横浜国立大学の服部先生はとは、HITO総研のキャリアに関する研究会でご一緒しましたが、そのときは採用に関する話はまったくすることがなかったので、先週のHRカンファレンスでの企画で、はじめて先生の取り組まれている「採用学」についてのお話を詳しく伺いました。
「採用学」というのは、採用を科学するチャレンジです。ガラパゴス的な新卒採用が行われている日本において、採用と科学はかなり縁遠いものになってしまっています。母集団管理や、面接選考などにおいても、科学とは少しは離れたところで議論がなされている感じがあります。 服部先生のお話を聞いていて、一番印象的なだったのは、人間の行動や心理について今の科学で説明できるのはどのくらいかという問です。この話を東京大学の中原先生としていて、お2人で一斉のせ、でパーセンテージをいいあった結果、真ん中あたりをとった数字として、「20~30%」という数値を当日は示されていました。お話によると、服部先生よりも、中原先生の方がやや低めの数値を示されたようです。 この20~30%という数字をどうみるかです。そして、残りの70~80%は何なのか。研究者からみれば、ノイズという表現を服部先生はされていました。 これは、たった30%!なのか、30%も!なのか、の捉え方で大きく違ってきます。リアリスティック・ジョブ・プレビューの考え方や、構造化面接の手法に初めてふれたとき、自分の中で何かがスパークするような気持ちになった新卒採用担当者もいるのではないでしょうか。これはある意味では、科学の力への期待があるようにも感じます。そして、その延長上で私たちに示唆を与えてくれるものは、まだまだたくさんあるに違いないと思います。 新卒採用というものの難しさの1つに、その成果が出るのがかなり未来のことだということがよく指摘されます。それは、5年後かもしれませんし、10年後なのかもしれません。なんであんな奴を採用したんだという社員が、10年くらいして凄い仕事をしていたり、またその逆もあったりします。 新卒採用には、情緒的なところと合理的なところの両方が必要です。例えば選考の段階で素点を積み上げると合格なんだけど、なんかあいつ不安なんだよな、という人を採用して後悔することがあります。5名の面接官の4名が反対しても、押し通して採用した人が実にいい仕事をしてくれることもあります。だからといって、勘やフィーリングだけで採用するのがいいわけではありませんし、もちろんそうならないケースも多々あります。 人は感情で動く生き物ですから、採用にも情緒的な要素があっていいのかもしれません。好き嫌いもある意味では大切な要素です。でも、新卒採用担当者はどちらかというと情緒面に傾斜しがちなことろがあります。それはそれで危険なところがありますし、社内でも感覚が共有できないという問題も出てきます。 そんなところに一石を投じてくれるのが、採用学なのかな、と私は勝手に解釈しています。採用とはこうあるべきだというような思想であったり、妙に情緒的であったりすることなく、いい意味で醒めて引いた視点でデータをきちんととらえて採用をみる、採用を科学的なアプローチで見つめ直すという姿勢は必要なことです。そして、私たちはデータに隷属するものではなく、データを活かす立場から、データを把握・理解した上で、次にその企業なりの情緒性をのせるのです。 30%! 凄くいい感じの数字のように思います。とても大切な30%ですし、この30%が大切な繋ぎ役にもなるように思います。そして、この30%をどう活かしていくかで、残りの70%が今までとはまったく変容する可能性も秘めています。 一番最後に服部先生は、「いずれにせよ、採用学はこの30%に挑んでいきます」と締めくくられていました、その言葉がとても印象的です。採用学のこれからに、とても期待していますし、何かご一緒できることもあればと思います。 ![]() ※穴のあいた天井。30%って、何となく、そんな感じ。
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