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「内定時期というトランジションを考える」開催報告 ~経営学習研究所sMALLラボ
7月6日(日)、またまた内田洋行様の「東京ユキビタス協創広場CANVAS」という素晴らしい場にて、経営学習研究所sMALLラボの企画を実施することができました。一週間遅れとなりますが、広報担当から写真もいただいたので、ごく簡単に振り返りたいと思ったのですが、たくさんの写真のおかげもあり長文になってます。

経営学習研究所sMALLラボでは、年に1回は新卒採用テーマを取り上げたいと思っています。昨年は「普段とは少し違った視点で就職活動を一緒に考えてみませんか」というタイトルの企画を6月に実施しました。

今回の題材は「内定時期」です。

冒頭にMallについての説明を長岡先生から。とても沁みる説明でした。この写真、とても素敵だと思うんですけど。

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そして内容に入ります。既に2015年度就職活動を終え、内定時期というトランジションに入っている就活生もたくさんいることと思います。会場にも該当者が数名いました。就職というのは、教室パラダイムから社会パラダイムへ、まさに人生で遭遇する最初の大きなトランジションの時期です。

そもそもこのテーマを取り上げたのは、ここのところ何度も採用面接で「御社に内定をいただけたとしたら、卒業までのあいだに何をもっと身につけておけばいいか、教えてください」というたぐいの質問を受けるなぁと思ったことによります。積極性をアピールする質問の1つでもあり、志望度の高さもアピールする質問でもあるのだとは思いますが、内定者面談でも、同じような質問を受けることもあるので、結構、本気で思っていたりする学生も多いんだなぁ、と感じています。

学生からみると、内定時期には2面性があります。(標準では)小学校から16年間に及んだ教室生活の最後の時期であるということ、そして果てしなく続くであろう社会生活の直前の最後の準備期間であること、このどちらにどう重きを置くかで、内定時期のデザインの考え方は変わってきます。

私はバブルの頃に新卒採用の実担当者をしていました。世の中では内定者の囲い込みが激しく加熱しており、10月1日にはTDLが内定者だらけになっていたような時期ですが、当時の私は、内定者教育、内定者の拘束というものにはかなり否定的でした。先にあげた学生からみた内定者の2面性の前者に強い想いを持っていたからでしょう。それは私が幸せな学生生活をまっとうできたからなのかもしれません。

でも、最近は意見が変わりました。どうしても、内定者フォローは必要です。内定者教育は大切です。

何が私の意見を変えたのか……。1つは、大学と社会の位置関係がいつの間にか変わってしまったということがあるんじゃないと思っています。その昔、大学は社会への入り口でした。でも今は、大学は社会への出口のように感じます。これについては以前のブログで詳しく書いているのでご興味があればご参照ください。

内定時期というのは、企業からみるとさらに複雑な多面性を呈しています。

採用担当者としては内定辞退阻止をこの時期に何よりも意識するでしょう。育成担当者は即戦力化のための事前育成期間と考えるかもしれません。また、教室モードから社会モードへのマインドチェンジを少しずつさせないとソフトランディングが不安です。さらにはリアリティ・ショックを少しでも小さくするために会社の理解を深め、組織社会化の第一歩を促進させたいとも思うでしょう。この会社が好きだ、この会社で頑張るんだという思いを強くさせることに重きを置く人もいるでしょう。同期同士のチームビルディングに特に注力する企業もあります。

要は自分たちなりにどうデザインするかなのでしょう、学生個人も、企業も。そして企業にとっては、内定時期だけを切り取って考えるのではなく、採用~内定時期~入社時研修~配属後の育成という流れ全体を意識してデザインする必要があります。これはとても大切なことです。

こんな私の問題提起を皮切りに、トップバッターの私を含めて7つのショートプレゼンが続きました。

2人目の登壇者は立教大学の舘野さん。今回はアカデミアの立場からのプレゼンをお願いしまた。中原淳先生や溝上慎一先生らとの共著書である「活躍する組織人の探求~大学から企業へのトランジション」を読んで、是非、舘野さんに来てほしいと思いました。しかし、教員という立場は、研究者という立場だけではなく、教育の実践者としての立場をも持ちます。そして今回は双方の立場から語っていただくことになりました。同質性の高い大学と、多様性の高まる社会とのギャップについて、「大学時代に豊かな人間関係を重視した人は、組織社会化において正の効果がある」「大学時代に多様なネットワークを持っていた人ほど、組織社会化に正の効果がある」との指摘はまったく私たちの実感とも重なります。

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3人目、4人目は企業が内定時期をどうデザインしているかという事例をご紹介いただきました。

まずは、ノバレーゼ様。ここのところいろいろなところへ登場されているのを拝見する高橋さんに登壇いただきました。詳細は来年の採用活動に響くといけないので残念ながら書けません(結構、衝撃的なスライドなのですが、写真もスライドが写らないようにトリミングしました)が、「内定という感動を一生のものにすることから社会人は始まる」というタイトルでお話いただきました。新卒で入社する会社から内定をもらうという瞬間は一生で一度のことです。この一生一度の瞬間をいかに感動的な瞬間にするかを真剣に考えておられます。このスタンスが事業ときちっとつながっている点がとても好感を持てます。何といっても、一生のうちでもとても大切なイベントである結婚という場をプロデュースして感動を与えるサポートをする企業です。企業のビジネスとやっていることがリンクしている行動は、他社からみてもとても腑に落ち感があります。また、内定者教育の場がまた凄いです。これを内製でやっているの!と驚くレベルのものですが、確かにこちらもうまく自社の資源を活用しています。

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次のホッピービバレッジ様は、新卒採用によって会社を生まれ変わらせた会社です。三代目社長の石渡美奈社長と以前に同じ職場だったこともあり、親しくしている会社ですが、今回は会社の広告塔でもある石渡社長ではなく、ビジネスの最前線と採用活動の最前線で戦っている大森GMに是非、登壇してほしいと思いお願いをしました。石渡社長個人の名人芸的なプレーではなく、企業としての想いでやっている活動を語って欲しかったからです。「気持ち面での社会人への移行を進めて4月を迎える」というタイトルでお話をいただきました。こちらは、徹底した内定者研修、内定者教育を実施する会社です。すでに入社しているみたいというくらいの感覚があります。これを深い愛情をもってやります。そして、4月には少し社会人の顔をした新入社員が並びます。「ベストな選択はない、選択をベストにする、それが人生」などというキーワードもたくさん散りばめられていました。

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ここで、ダイアローグを1回入れます。今回は登壇者でもあるホッピービバレッジ様が、もの凄く素敵なことに樽詰めホッピーなどのホッピー製品をご提供してくださり、呑み放題でのワークショップです。MALLならではの企画です。開演30分前から開場をしており、開場と同時に多くの方がご来場いただき、開演に先立ち、喉を潤されます。アルコールを提供する善し悪しはあるとは思いますが、アルコールは会話の潤滑油になることは間違いありません。ただし、呑み過ぎ注意です。特に運営側は……。なんか写真だけみると、ただのカジュアルな吞み会のような雰囲気でもあります。

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こちらの写真は、この日を盛り上げてくれたホッピーの採用チームのメンバーです。たくさんの機材と商品、氷などまで持ち込み、ホッピーをはじめとする美味しい飲料をご提供いただきました。全員が兼務で採用担当をしており、工場からの2人は、発酵担当と品質管理の担当とのことです。私たちが作っているホッピーですといわれると、なおさら美味しく感じられます。

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そして本日の呑み放題呑み物メニューはこちら。呑み放題メニューがあったり、4時間呑み放題のワークショップも珍しいですね。

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さりげなく今度の火曜日と水曜日に開催予定の「赤坂 食べナイト 呑まナイト」の紹介もされています。私は今のところ火曜日に行く予定です。

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さて、ホッピーに何をつまみとして合わせるのか、これが難問でしたが、高級つま缶を多量に用意しました。パラエティが凄いです。ただ、少々食べにくいのと、汁ものの生ごみが出るのが難点でした。あとは、10種類のポテトチップスです。食べ比べ、わかったかな。

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このあとは大学側からのプレゼンが続きます。

まずはキャリアセンターの立場で東京理科大学の渡辺さんに登壇いただきました。以前にブログで書いた「HRダイアローグの会」の幹事をしてくださっている方です。そして、教員の立場からは明星大学の高橋先生に登壇いただきました。結構、大学ではキャリアセンター、教員、職員が一枚岩で就職支援ができていないという現実があるようなので、大学側からは異なる立場の少なくとも2人の登壇者に語っていただきたいと思っていました。

実は大学側からのプレゼンテーターは募集の段階で未定でした。参加者として応募してくださった方の中から、存じ上げている方でこの方なら語ってくださりそうだという方に不躾にお願いをいたしました。

東京理科大の渡辺さんの話は、渡辺さんのお人柄がすごく出ていました。他の登壇者の皆様も同様なのですが、時間が足りなくて申し訳ないことをしました。内定を受けてしばらく後の学生の発言として「こんな自分で通用するのでしょうか?」というのがよくあるとのこと、ふと、怖くなるわけですね。社会のイメージとして、予測困難、答えがない、弱肉強食、混沌、……などなどが出ましたが、優秀な学生(?)ほど「決められた通りにきちんとやっていればよかった」のが、そうではなくなるんだということを感覚的に感じているからの怖さでしょう。また、「自分で決めた感」が大切だという話も同感です。私も採用セミナーなどでよく話しています。

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明星大学の高橋先生も実に分厚い話をしてくださりました。就活後に学生がいかに成長しているかという話も興味深かったです。時間を守る、他者への気遣い、後輩のために働こうとする、人前で話す内容・態度がしっかりする、こんな変化が就職活動によって生じるというお話です。この分野を研究領域に置いていらっしゃるとのことですので今後がとても愉しみです。「内定時期は進路決定後のおまけではない」というのも、今日の会の意義を語ってくださっているように感じられました。それにしても大学生活の中で、就職活動に匹敵するような成長機会をたくさん提供するには何から手がければいいのでしょうか。

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そして最後の登壇者は学生、と思ったのですが、まだ内定時期をあまり過ごしていないタイミングなので、新社会人に登壇していただき、内定時期を振り返ってもらうこととしました。誰にしようかなぁと思案しましたが、3月の卒業間際に、ばったり丸の内のラーメン屋で出会った中江さんにお願いすることにしました。長岡研究室のOGです。とある3月の夜、花田光世先生のスーパービジョンのあとの懇親会が終わり、小腹がすいた数名のメンバーがラーメン店に入ったのですが、そこで私たちのテーブルを担当してくれたのが中江さんでした。私はちゃんと人の顔をみないたちなので、帰り際まで気づかずに申し訳ないことをしました。何となく、このときの印象で面白い話がきけるんじゃないかと思ったのが主たる人選理由ですが、当りでした。

中江さんのプレゼンは実にある種の安定感があります。場をつくれる人ですね。

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指導教官である長岡先生が左側でシルエットになって見つめておられます。子弟愛を感じる瞬間です。

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そして、後半のダイアローグ。すでにアルコールも相当に入っています。雰囲気はこんな感じです。

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会場の壁一面には、申込時に参加者の皆様から寄せられた「内定時期の二面性、どちらが大事?」というテーマに対する語りが掲示されています。

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この掲示は学生スタッフが工夫して担当してくれました。Mallのイベントでは、いつも学生スタッフがアルバイトとして運営を手伝ってくれています。学生スタッフにイベントの運用経験をしっかりとしてもらい、いずれの日にか自らが主催者になって欲しい、そんな想いが根底にあります。今回も4名の学生がスタッフをしっかりとつとめてくれました。
こちらの写真は、今回の受付スタッフです。石川君だけ写真がなくてごめんなさい。

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また、ダイアローグでは、企業・大学・学生がなるべくばらつくように、ネームカードに属性シールを貼っていただきました。どうしても企業の方が多くなりますが、学生も10名ほど、大学からも10ほど参加してくれました。この混合ぶりが、Mallの企画の良いところです。

会場に、三幸製菓の杉浦さんがいたので、突然指名して語っていただきました。三幸製菓さんの採用の話はよく伺いますが、内定者に対しての対応などを伺うのは初めてでしたが、やっぱり一ひねり考えています。

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学生スタッフも受付が終わって、名簿のチェックと会計の〆をやってからは、会場に入って一緒にダイアローグに交ります。内定者である4年生には突然指名して話をしてもらいました。参加者も、スタッフもいつ登壇者になるかわからないスリルのある会です。

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そんなこんなで会は終わります。いつものようにコンテンツが多すぎて、消化不良の部分があったり、全体的な設計が不十分なところがあったり、最初の雰囲気つくりをもう少しみっちりやった方がよかったなぁなどと思ったりと、反省点は多々あります。また、このレポートも勢いで書いているので、何があったのかよく伝わらないところもあるかと思います。

実は今度の火曜日に自社の内定者を集めており、今回得た知見をそのまま活用させていただいちゃったりもします。他の参加者の方も、自分の会社、自分の大学での仕事に何かの作用があったでしょうか。越境学習することにより、意識する意識しないに関わらず、自社のビジネスに何か少し変化が起きるということは大切なことです。それがノウハウや知識を得るという合目的的なことばかりでなく、何かが少し揺さぶられたという感じであれば素敵な気がします。

ただ、日常と関わりのあるテーマ性の強いイベントでは、どうしても自分の日常が邪魔をします。持ち帰ろう意識も邪魔をします。企業・大学という組み合わせでもそうですが、企業・大学・学生という組み合わせではなおさらその傾向が出た感じがします。例えば、企業人としての1人と、大学生としての1人の間には境界が生まれます。ただ、普段、採用シーンでしか巡り合わないこの両者が巡り合っているということは、物理的な境界はこの日に限っては存在しなかったのですが、異なる境界は消えませんでした。これをどう見るかは、もちろん見る人のスタンス次第です。ただ、ここのスタンスを見誤ると、この日の話の中でも少し出ましたが、「企業はつまらなそう」という感覚に結びついてしまいそうな危惧も感じます。ここはまた別の機会に深めたいと思います。

いずれにしましても、いろいろと主催者としては不十分な点もありましたが、とてもありがたいことに、ほとんどの方が終了後も残って、ダイアローグを自由に続けてくださいました。これはなかなか主催者としてしはありがたいことです。下の写真は終了後しばらくたってからのものですが、いまだに開催真っただ中みたいな感じですよね。ホッピーさんと内田洋行さんのご厚意により、呑み放題のラストオーダーは会の終了後ち30分後までとしていただけたので、皆さんに最後の最後までお愉しみいただけることができました。

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それにしても、このようなイベント。実に多くのスタッフの皆様の努力の上で成り立っています。共催の内田洋行さん、飲料提供のホッピービバレッジさん、登壇者の皆様、学生スタッフの皆さん、そして経営学習研究所の理事、広報担当で研究員の松浦さん。
イベントつくりは、もの作りの世界です。だからやってて面白いんですね。この面白さをもっともっと多くの人に味わってほしいとの想いで、アトリエMallプロジェクトが始まっています。ご興味のある方、一緒に何かをやらかしましょう。詳しくは、Mallのホームページで。
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【2014/07/13 20:53】 | 経営学習研究所(MALL) | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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