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近未来~認知的エンハンスメント
昨日はパワードスーツがもたらす近未来の課題について書きましたが、実はもっと深刻な問題があります。パワードスーツはあくまでも筋力の強化でしたが、同じようなことが「脳」についても確実に現実化してきます。

人間がいわゆるドラックと付き合ってきた歴史には長いものがありますが、ドラックはある効果をもらたすものの、その副作用から社会悪とされてきました。必ずしもドラックではないですが、アルコールやたばこ、カフェイン等は、その副作用の小ささから(そうでもない?)、ある制約の中で合法化されてきています。

では、ドラックは副作用があるからNGなのだと考えていいのでしょうか。

「スマートドラック」といわれているものがあります。これは、人の脳機能を高める薬物のことで、薬事法的な分類では医薬品であるものと、いわゆるサプリメントに分類されるものもあり、インターネット上で個人輸入等のかたちで広く流通しているようです。要は、記憶力を高めたり、頭の回転を早めるという実際的な効果がある何らかの薬物です。

「脳ドーピング」という言葉があります。オリンピック選手等が薬物使用をするドーピングはご承知かと思いますが、この脳版です。治療目的以外で中枢神経を刺激する薬物を服用して脳活動を高めることをいうそうです。「認知的エンハンスメント」という言葉もほぼ同義語として使われているようです。

世界的な科学誌「ネイチャー」が2008年に60カ国1400名の世界中の研究者を対象に実施した調査では、5名に1名がリタリン、モダフィニル、ベータ・ブロッカー等の集中力や記憶力を高めるため、薬物を治療目的としてではなく使用したことがあると回答しています。また、そのうちアメリカでは62%が注意欠陥・多動性障害(ADHD)に用いられるリタリンを使っていたとのことです。

例えばリタリンは国内でも睡眠障害などの治療に処方されているそうですが、幻覚等の副作用が指摘されています。これらの薬物は現段階では「副作用があるから」との理由で規制されています。では、もしも副作用がまったくない安全でそして安価に思考力を高めることができるスマートドラックが開発されたら、世界はどうなるのでしょうか。

脳科学を専門とする京都大学大学院医学研究科の美馬准教授は、いずれノーベル賞の選考の際に、候補者の研究者から血液や尿を採り、ドーピング検査をする日がいつかくるのではないかと指摘されているそうです。もちろん脳ドーピング検査です。しかしし、はたしてスマートドラックが安全なものになった場合、思考力を強化する薬物を飲んで研究成果をあげることは不正だと断言できるでしょうか。私たちが徹夜で準備した大事なプレゼンの前に、気持ちをしゃきっとさせるためにユンケルを飲むのと何が違うのでしょうか。

「ネイチャー」誌の調査から推察すると、既に企業内研究者でもある比率でスマートドラックは個人的に活用されてていると考えていいでしょう。その結果、高い業績があげられれば企業としては悪いことではありません。しかし、このような能力の増強は「努力」というものを不要にし、人間観・仕事観を大きく変える可能性があります。また、これが経済力によって左右されるようになった場合、格差社会は明確に固定化されます。また、この問題は「老い」のテーマにも大きな問いを投げかけます。現実的にスマートドラックを一番使用している年齢層は高齢者層だとのことです。

パワードスーツは目に見えるものです。ですから、良くも悪くも問題が顕在化します。この認知的エンハンスメントの問題の難しさは、目に見えないところです。そして、パワードスーツ以上に人間の倫理観との対峙が必要なところです。

パワードスーツをまとい、スマートドラックで思考力を強化された人間。完全にSF的な世界ですがこれが近未来的に現実になります。これらを全地球的に平和的に制御できるかどうかが、人間力ならぬ人類力ではないかと感じます。

《2010年2月3日》 大阪にて厚生労働省の短時間正社員導入支援モデル事業のシンポジウム。終了後は厚生労働省や委託先の三菱UFJリサーチ&コンサルティングの皆様も交えて打ち上げ懇親会。半年くらい一緒にやってきたので終了するのは寂しい気もしますが、これからも御縁は続くことと思います。


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【2010/02/03 23:57】 | HRM全般 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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